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ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その2から パスポートを受け取った日、ハルヒはいきなり俺からそれを横取りし、どこかの悪の党首へか、その写メを送っていた。 「親父の携帯へよ。旅行会社に教えとかないといけないんだって」 ハルヒは、俺にパスポートを返しながらそう言った。 「それにしても変な顔ね。もう少しマシなの、なかったの?」 返しながらも、ハルヒは妙に固まってるポスポート添付の俺の写真にケチをつける。 「いきなり連れてこられて、そこのコイン写真機で撮ったんだろ。マシとか、そういう問題か」 するとハルヒは「ちょっと待ってなさい」と言い捨て、そのコイン写真機の中へ飛び込むように消えて行った。 数分後、コイン写真機の横で、ハルヒと俺は写真が出てくるのを待っていた。 「ほら、どう?」 ハルヒが引っ掴み、俺の顔の前に突き出した写真には、100ワットの笑顔で笑ういつものハルヒがいた。 「こういうのはね、コツがあるのよ」 「それを撮る前に教えろよ」 「つまり……好きな奴が目の前にいるとイメージすんのよ。んもう、うっさいわね!」 「いや、まだ何も言っとらん」 「じゃあ、この話題、終了!」 「……かえって目つぶりそうにならないか?」 「ん、何?」 「いやいや.終了だ、終了」 「なに、何なの? 言いなさい!」 幸運にもハルヒの携帯から着信音がなり、追求は中断した。 「親父? 今のちゃんと撮れてなかった? あ、そう。キョン、あんたにだって」ハルヒから携帯を受け取る。 「お電話かわりました」 「代わられました、涼宮親父です。あのな、トランクだが、うちの連中の分は、まとめてレンタルしようと思ってるんだが、一口乗るか?」 「あ、ええ。俺も持ってないんで、お願いできるなら」 「じゃあ、出発の2日前に自宅に配達されるようにしとく。デザインの方は任せてくれ。誰ともかぶらないオリジナリティあふれるやつにしとくから」 俺の耳に着けた携帯に、向こう側から自分も耳をくっつけていたハルヒは、そこでいきなり自分の携帯を奪い、もとい取り返し、親父さんに相手に吼える。 「あんた、キティーちゃんの浮かせ彫りみたいなのにしたら、ただじゃおかないからね!」 「わかった、わかった。切るぞ」 「あ、もう。切れたわ」 「なんだ、その、浮かせ掘りって?」 「昔、親父にレンタルするトランクを頼んどいたら、なんとあたしののデザインが、ミッキーマウスとミニーマウスが、ソーラン節を踊り狂ってるようなトランクでね」それ、想像できるか? 俺にはできん。 「小学生ながら、顔から火が出たわよ」 「なんか急に不安になってきた」 「どうせ3泊4日なんだし、トランクなんていらないんじゃないの?」 「そうなのか。旅慣れないせいか、そういうのは、どうもよくわからん」 「南極行くってんなら、着るもの食べるもの、生活に必要な一切を持って行かなきゃならないだろうけど、今時、どこの国でも都市に出たらコンビニはあるしネカフェもあるし、手ぶらで行って必要なものを現地調達すればいいのよ。気候だって違うんだから」 「で、おまえはどうすんだ?」 たしか合宿のときとか確か軽装だったよな。 「トランク? もちろん持って行くわよ。あたしは万事において全力でいくのがモットーだから。旅行の荷造りだって例外じゃないわ!」 その気合いはどこに向けられてるんだろうね? 俺にとっては始めての海外旅行だが、万事あの親父さんが取り仕切り、そこに万一遺漏があったり、十に一悪ふざけがあったにしても、さらにその奥には、ハルヒのあのハイパー母さんがいる訳で、パスポートもとれた今、俺には何をやることもなく、心の準備すらもなんだかどうでもいいような気がして、ただ出発までの日を、いつのもの日常をのんべんたらりと過ごすだけなのであった。 それはハルヒも同じことのようで、部室でネットを見ているときに、巡回先が今回の行き先の何とか島だったり、そこでの何とかスポットであることを除けば、これまた、しごく心おだやかに暇を持て余しているのだった。 「いやいや。そうとばかりも言えませんが」 何だよ、古泉、また宇宙の危機か? 俺には時折パソコンの向こうから、くふふふ、とか、えへへへ、といった間抜けが声が聞こえてくる以外は、まったりとしてその上どっぷりな日常しか感じられんぞ。 「ええ、涼宮さんは極めて上機嫌です。このところ閉鎖空間の発生もありません」じゃあ、ノー・プロブレム。問題なしだ、良いことじゃないか。 「……今回、あなたという人間が、ご自分のことについても、極めて鈍感な方だということがわかりましたよ」 大きなお世話だ。顔が近い、それをさらに近づけるんじゃない、古泉。 「まさかと思いますが、『ぐひひひ』とか『えへへへ』とか『ハルヒの水着か……』などと、つぶやいているのに気付いておられないのですか?」え? 誰が、何をだって? 「いえ、もう結構です。失礼しました」 古泉は、失礼な言いがかりを付けるだけ付け、後ろから誰か気配でも感じたのか、少し振り向くと急に立ち上がった。それと同時に、もう一人が椅子を引いて立ち上がり、つかつかとこっちに近づいてくる。 「こ、こ、こ、この、エロキョン! 顔を洗って出直しなさい!!」というハルヒの怒声にタイミングを合わせ、長門が本を閉じる。本日のSOS団、終了。 SOS団は解散となったが、俺は居残りを命じられ、着替え終えた朝比奈さんが小さくぺこりと頭を下げ去って行くのを見送りながら、部室の前の廊下に立っていた。古泉と長門は先に帰った。数十秒後、ドアが開いて、頭から湯気をあげ、まだゆでダコ気分が顔から抜けないハルヒが現われた。 「やっぱり、あんたに任せっきりにすると、ろくなことがないわね」 そういって、ハルヒは右手の人差し指を、俺の眉間に撃ち抜かんばかりに、びしっと俺の顔に突きつけた。 「今日はあんたの家で、あんたの分の荷造りをするわ。あたしが旅行の心構えってものを、一から教えたげるから覚悟しなさい!」 「いや、しかし、トランクがまだ来ないだろ」 「そんなものはどうとでもなるのよ!」 そう言い終わらないうちに、ハルヒは携帯でどこかに電話しはじめた。怒ったり泣いたり笑顔になったり、電話だけで十二面相をやらかした後、息を切らせながらも、いつもの100ワット笑顔となって電話は終了。 「はあはあ。どんなもんよ! これで、トランクは今日の6時にあんたの家に配達されるわ」 「そうか」 心の中で見えない拍手。パチパチパチ。 「時間が少しあるから、帰りに必要なものの買い出しにいくわ。それからあんたの家を直撃よ!」 「なあ、ハルヒ。言ってもいいか?」 「意見だけなら、いつでも聞いてあげるわよ」 「泥水も飲める携帯ストロー型浄水器って、どこで使うんだ? っていうか、どういうとこへ行くつもりなんだ?」 「万が一ってことがあるでしょ。海外旅行で一番油断大敵なのが水なのよ、覚えておきなさい!」 「というか、さっきから俺たち防災グッズ・コーナーにずっといるんだが」 「うっさいわね。そのストローは、泥水だけじゃなくてお風呂の残り湯だって飲めるのよ! ……って、なに想像してんのよ、このエロエロキョン!!」 「しとらん! 想像してんのは、おまえだ、ハルヒ!」 「覗くのももちろん、飲むのも禁止だからね」 「飲まん! そこまでマニアックじゃない!」 「マニアックだっていう自覚はあったんだ……」 「……な、ない!」 「次はこれよ! 耳掛け式強力LEDライト!明るさは2段階調整。イヤークリップの付け替えで左右どちらの耳でも装着できるわ」 「今度行くところには洞窟とかあるのか?」 「ないわ」 「じゃあ、いつどこで使うんだ?」 「夜に決まってるでしょ。そんなことだから『昼行灯』とか言われるのよ」 「誰も言ってねえよ、そんな古風なあだ名」 「とにかくヘッドランプなんて大げさでしょ。これを、ちょいと耳にひっかけておけば、夜間作業もバッチリよ」 「俺は夜中に穴なんか掘りたくないぞ」 「まあ、あたしたちが使うのは、せいぜい夜とか飛行機内での読書灯かしら」 「長門に土産に買っていってやるか」 「土産じゃないでしょ!」 「次はこれよ!折りたたみ式でコンパクトになる携帯用蚊帳その名もスパイダー」 「おまえ絶対、テレビ・ショッピングのヘビー・ユーザーだろ?」 「あたりまえでしょ。『通販生活』だって定期購読してるわよ」 「しかし携帯用の蚊帳なんて必要なのか?」 「いちいちうるさいわね。ジャングルでビバークする時の必需品でしょ。そんなことじゃゲリラ戦を勝ち抜けないわよ」 「そんなトーナメント戦、出たくねえよ」 「うるさいわね、蚊帳の外に置くわよ」 「どこの大喜利だ!」 「お、ハンモックがあるじゃないか」 「あんた、そんなもの欲しいの?」 「ヤシの木陰でハンモックで昼寝するなんて、子供時代、誰だってあこがれる夢だろ?」 「昼寝って、あんた南の島に何しに行くつもり?」 「何って、リゾートだろ?」 「あんたの場合、『湯治』と書いて『リゾート』とカナを振るんでしょ?」 「うまい」 「うまくない! あんたなんか、日本にいたって学校にいたって、居眠りしてるんだから、怠け者の節句働きよ! もっとアクティブなことやりなさい」 「たしかに休日の方が、ぶらぶら市街探索とか、おまえと映画行ったり飯食ったり店ひやかしたり、意外と忙しくしてるな」 「ちょっと! 突っ込みどころ満載よ!『ぶらぶら市街探索』って何? やる気がべそかいて逃げていくでしょうが! 『おまえと映画うんぬん』は、きっぱり一言『デート』でいいのよ!」 「い、いいのか?」 「こ、この際だし、許す。で、でもねえ!」 「まだ、なにか?」 「一緒に行くのに、だいたいハンモックなんて、一人でしか寝られないじゃないの!」 「いや、二人用もあるみたいだぞ」 「キョン、それ、いっときなさい」 「耐過重1000キログラム」 「そんなに重くないわよ!」 「わかってるって」 「次はこれよ! 体温保持率90%で氷点に近い外気温の下でも体温が下がるのを防ぐ、手のひらサイズにたためるヒートシートビビーサック!」 「んー、南の島に行くんじゃなかったかしら、私たち?」 「ハルヒの母さん!」「母さん!」 「サバイバル・グッズ・コーナーで、大騒ぎしながら品物選んでる制服カップルがいるって、近所の奥さんが教えてくれたの」 「「……」」 「それ、全部持ってくの? トランクじゃなくて、トレーラーが必要じゃないかしら?」 「戻してくる」「きます」 ハルヒの母さんと別れ、正気に返った(?)ハルヒと俺は、その日の残りの予定、つまり「トランクに旅行の荷物を詰め方を実践で学び、同時に海外旅行の心構えを習得する」を消化するために、俺の家へ向かった。 玄関を入ると、そこには見知らぬトランク・ケースが鎮座している。恐る恐る近づいて開けてみようとすると、そこはお約束、 「あー、ハルにゃん、キョン君、おかえりなさーい」 「ただいま」 「おまじゃまするわ、妹ちゃん」 「はーい。ねえ、キョン君、そのおっきなカバンにまた入ってもいい?」 「いけません」 俺は妹に言い聞かせるように説明した。 「いいか、飛行機に乗るには、こういう大きなカバンは、チェックインカウンターというところで預けないといけないんだ。飛行機はでかいから何百人という人が乗り込む。つまり何百人分の大荷物を急いで飛行機に放り込まないといけないから、空港では預けられた荷物はとても乱暴に扱われるのが普通だ。このトランクのこことここ、それからこのあたりを見てみろ。傷だらけだろ。空港では何しろ時間がないから、トランクなんか放り投げたりする。だから、トランクの中に少しでも隙間があると、中は無茶苦茶になってしまうんだ。そうだよな、ハルヒ?」 「あ、うん。そうよ。だから今日も、キョンの荷物が無茶苦茶にならないように、あたしが詰め方を教えに来たの」 「そうなんだー。ハルにゃん、今日、ご飯食べてく?」 「うーん、ごちそうになろうかな」 「わーい。お母さんに言ってくる。じゃあ、ごゆっくりー」 「ねえ、さっきのトランクの説明だけど」 「ああ、口からでまかせだ。おかしかったか?」 「ううん。おかしくない。あんたって、時々わからないわね」 「……実はネットで調べた。その、なんだ、俺なりのモチベーションの高め方というか……」 「うん……時々わからないわ」ハルヒはそれっきり口を閉じて、それから目を閉じた。顔と顔の距離が、どちらかということなしに近づいていく。そして…… ドアはノックもなしにいきなり開けられた。お約束。 「ハルにゃーん! お母さんが、台所、いっしょしたいって!」 「うん、手伝う。すぐに行くって」 「はーい」 兄にノックの件を小言すらさせないのか、妹よ。あー、どうして顔面がこんなに熱いんだろうねえ。 「じ、じゃあ、あたし、ちょっと、行ってくる」 「あ、ああ。すまんな、いつも」 「い、いいって」 ハルヒがパタパタという音を立てて階段を下りていく。あの「ハルヒちゃんに何をしたの!?」の後だからなあ。まあ、そこはハルヒ、如才なくやるだろうが。あー、それにしても、どうしてこう顔が熱いんだろうねえ。 夕食は、いつもの俺ん家の夕食プラス1(ハルヒ)といった、すでに見慣れた通りのものだった。あとでハルヒに聞いたら、夕食を用意している時も、うちの母親もいつもと変わらなかったという。 というわけで、本日のメイン・イベント、涼宮ハルヒ博士による「トランクの詰め方」だ。 「まず、開けてみて」 「こうか(ガバっ)」 「中に鍵がついたタグがあるでしょ。それに暗証番号のセットの仕方が書いてあるわ。まあ3〜4ケタだし気休め程度ではあるけれど、番号を揃えてから鍵を開けないと開かないの」 「これだと3ケタだな。◎…◎…◎と」 「861」 「なんで?」 「8ハ(チ)、6(る)、1ひ(とつ)」 「6が『る』ってのは?」 「14106でアイシテルだろ」 「ポケベル語!? あんた、いつの時代の人よ!」 「じゃあ、おまえは?」 「940」 「訳を聞こうじゃないか」 「9キ(ュウ)、4ヨ、0(テ)ン」 「……自分で言うのも何だが、名前を暗証番号に使うのは、やめた方がいい気がするぞ」 「うーん、自分の名前ならまずいだろうけど、ほら、お互いの名前だから」 「まあ、かまわんか」 「うん、気休めだし」 「さあ、いよいよ荷物を詰めるわよ」 「ああ。よろしく頼む」 「まず原則は、あんたも言ってた通り、トランクは一杯にすること」 「ああ」 「但し! 帰りはお土産なんか買って荷物が増えるけれど、行きも帰りもトランクは一杯にする。帰りの増加分は、機内持ち込みのバックを空に近い状態にしておいて、そっちを使うのよ」 「なるほど」 「まずは開いた状態のトランクの広い底面に、洋服なんかの大きくて柔らかい物を、同じく底一面に広げる様に敷き詰めながら入れる。服は決してたたんだり、丸めたりしないこと。その方が余計にかさばるからよ」 「そうなのか」 「帰りは同じように、トランクの広い底面にお土産の箱ものや袋ものも平らに敷き詰めるの。心配なら、ますタオルを敷いて、その上にお見上げ、その上に上着と、サンドイッチ状態にすればいいわ。上着や服のそでがこの時点でトランクからはみ出ても問題なし!」 「おい、ほんとに問題ないのか?」 「ここまで底面に敷き詰めたあとで、箱モノや重い物を積んでいくの。これはパズルの容量でいいわ。車輪の着いた方が、持ち運ぶときは下になるから、重いものはそっちに配置ね」 「なるほどな」 「ここまでで大物、中型のものは全部入ったわね。あとはコスメとか、まああんたに用はないだろうけどや文房具なんを隙間に詰め込んでいくわ」 「まあ、土産を持ち帰るときは、そうするよ」 「えーと、あんたの下着はこの引き出しね」 「おいおい、勝手に開けるな」 「かって知ったるなんとやらよ。下着やタオル類はくるくると巻けば収納効率が良くて、隙間をつめる「詰め物」にもなるから一挙両得よ。トランクを開けたときも、どこにあるか一目で分かりやすいしね」 「わかりやすいはいいが……」 「うーん『詰め物』がちょっと足りないわね。これだと内でぐらぐら動くから、もっと下着とかTシャツとかタオルを出して。こうして増量して、きっちり動かないように詰めていくのよ」 「……」 「これで全部入ったわね。さっきはみ出してた服の袖とか裾は、この段階で全体をくるむように真中へ折り返す。その上で、トランクの内についてるバンドをかけると、内で荷物がバラバラになるのを極力さけられるというわけ。……さあ、何か質問はない?」 「ハルヒ、おまえの説明は大変よく分かったし、俺の旅行用トランクは見事に完成したが、……お約束ですまんが、今日俺が着替えるはずのシャツも下着もみんなこの中だ」 その3へつづく
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autolink SY/W08-108 カード名:ウェディングドレスのハルヒ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1500 ソウル:1 特徴:《団長》?・《ドレス》? 【永】 あなたのクロック1枚につき、このカードのパワーを+500。 もちろんあたしも着るわよ レアリティ:PR illust.- 初出:メガミマガジン 2006年10月号 ピンナップ② ブシロードスリーブコレクション Vol.31封入 願いを受け継ぐ者 秋葉やキングなどの「あなたのレベル置場のカード1枚につき」の亜種で、クロックが6枚あるときに最大パワーの4500になる新しい能力を持ったカード。 このカードを相手にしたときは、アタックする順番を考えないと、気づいたらパワーが足りないということになりかねないので注意しよう。 また、レベル置場と違いリセットされてしまうのでそちらの面でも注意が必要。 2ターン目あたりでクロックが3~5枚程度で出せるとベストか。
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とある喫茶店。 女二人が向かい合って座っている。 「悪いけれども、今日は、男性を相手にするときと同じ口調で話させてもらうよ。そうしないと、平静を維持できそうにもない。僕は、涼宮さんとは違って、強い人間ではないのでね」 佐々木の発言に、涼宮ハルヒは黙ってうなずいた。 「では、何から話そうか?」 「キョンのこと、どう思ってる?」 涼宮ハルヒの単刀直入な質問に、佐々木はあっさり答えた。 「好きだった。……うん、そう、過去形だよ。いや、現在進行形の部分が全くないといえば嘘にはなるだろうけど、もう、諦めはついている」 「なんで? フラれたわけでもないのに」 「告白すればフラれるのは明らかだ。キョンに異性間の友情という命題について肯定的な確信を抱かせてしまったのは、僕だからね。自業自得というやつさ。キョンにとって、僕は友人以外ではありえない」 「友情が恋愛感情に変わることだって……」 「キョンはそれをあっさり否定したよ。あれはいつものちょっとした世間話だった。今でもはっきり覚えてる。『友情が恋愛感情に変わるなんてありえん。そんなのは物語の世界だけだ』とね」 涼宮ハルヒは、複雑な表情を浮かべた。 「不安になってきたかな? その不安は正しいと思うね。このままじゃ、キョンと涼宮さんの関係も友人関係で確定してしまう。変えたいと思うなら、今すぐ行動することだ。今ならまだ間に合う」 「なんでそう言えるの? キョンは有希やみくるちゃんが好きかもしれないじゃない」 「それはないよ。長門さんも朝比奈さんも、恋愛については意識的に避けようとしている。キョンは他人のそういう態度には敏感だからね。ほとんど無意識的になんだろうけれども」 「でも……」 「キョンの長門さんに対する態度は、父性的な保護者のものだ。これは彼が妹持ちなことが影響してるのだろう」 「それはなんとなく分かるけど」 「そして、朝比奈さんに対しては、二律背反的な感情を抱えてるように思える。憧れと同時にどこか反感めいたものも感じるんだ。反感の原因は分からないけどね」 涼宮ハルヒは、唖然とした。 普段のキョンの態度から見て、朝比奈みくるに対して反感を抱いているなんてことは想像もつかなかったから。 「その二人に比べれば、涼宮さんは無条件で魅力的な女性だよ、キョンにとっては。キョンをこれほどまでに引き付けられたのは、初恋の従姉妹のお姉さんを除けば、涼宮さんが最初だと思う」 「佐々木さんだって、充分魅力的なんじゃないの?」 「世の男性の抱く感情の平均値でいえばそうである可能性も否定はできないかもしれない。しかし、この場合は、キョンにとってどうであるかが問題だ。僕はキョンの恋愛感情的な意味での好みを満たすものを持ち合わせていない」 「キョンの好みって、どんなのかしら? いまいちつかめないのよね」 「これは話に聞くところのキョンの初恋の相手から分析した結果だけどもね。退屈を感じさせる暇すらないほどにパワフルで笑顔のまぶしい女性。簡潔にいえば、そんなところだ」 佐々木は、紅茶のカップに口をつけた。 涼宮ハルヒは、テーブルの上の紅茶のカップに触れようともしない。 「佐々木さんは、本当に告白する気はないの?」 涼宮ハルヒは、にらむように佐々木を見た。 「ないね」 「なんで?」 「キョンははっきりと断って上で、それでもなお変わらぬ友情を維持してくれるだろう。でも、僕はそれに耐えられない。ならば、現状の友人関係を維持し続ける方がベターだ。最初にもいったとおり、僕は涼宮さんほど強い人間ではない」 「なら、私をけしかける理由は何なの? 告白してフラれてしまえばいいなんて思ってるわけ?」 佐々木は苦笑した。 「正直にいえば、そういうどす黒い気持ちもないわけではないよ。でも」 佐々木はここで一度言葉を区切った。苦笑が引っ込み、真剣な表情に変わる。 「これは何よりもキョンのためなんだ。僕にとって彼が大切な友人であることには変わりはない。彼には幸せになってほしいと思う」 涼宮ハルヒのにらみつけるような視線は変わらない。 佐々木は、それを確認してから、付け加えた。 「友情が恋愛に質的転換を遂げうるのは、キョンにとっては、涼宮さん以外に考えられないんだ。彼が今後、涼宮さん以上に魅力的な女性に出会う可能性はほとんどないだろうからね。この機会を逃せば、キョンは一生独身だよ」 「……」 「言っておくけど、キョンの方から告白してくるのを待つのは最悪の選択だ。彼は、異性間の友情に疑問を持ってないし、今の涼宮さんとの関係に不満があるわけでもない。彼が自ら積極的な変化を望む可能性は0だ」 「キョンって臆病者?」 「あながち外れてはないのかもしれないけど、より適切な言い方をすれば、恋愛感情は精神病という教義の熱心な隠れ信者なんだと思うよ。初恋が破れたときの経験がトラウマになってるのだろう」 佐々木は紅茶を飲み干した。 「僕から話せることはこれぐらいだ。あとは、涼宮さんの判断に任せるよ」 佐々木は、伝票をもって、席をたった。 涼宮ハルヒは、紅茶のカップをにらみながら、ずっと考え込んでいた。 やがて、意を決したように顔を上げると、携帯電話を取り出した。アドレス帳の一番上にある電話番号を呼び出す。 「いつもの喫茶店に集合。今から30秒以内。遅れたら罰金」 一方的にまくし立てて、通話を切る。 彼が来るまでの時間。それは、彼女にとって永遠に等しいぐらいの長さに感じられた。 終わり
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ヴァイスサイド 涼宮ハルヒの憂鬱カードリスト ブースター エクストラブースター トライアルデッキ パワーアップセット プロモーションカード 総評 ブースター 発売日:2009/12/19(土) カード種類数:全100種(RR:8種/R:20種/U:28種/C:32種/CR:4種/CC:8種)+パラレル16種(SP:2種/RRR:6種/SR:8種) 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 SY/W08-001 キャラ RR RRR 黄 キョン 0/0 2500/1/0 《SOS団》 SY/W08-002 キャラ RR 黄 サンタっ娘ハルヒ&キョン 3/2 10000/2/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-003 キャラ R SR 黄 Xmasパーティ キョンの妹 0/0 500/1/0 《動物》 SY/W08-004 キャラ R RRR 黄 謎の転校生 古泉 1/0 2500/1/0 《超能力》 《SOS団》 SY/W08-005 キャラ R 黄 見えざる信頼関係 ハルヒ&キョン 1/1 5500/1/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-006 キャラ R 黄 “いつも”のキョン 2/1 8000/1/1 《SOS団》 SY/W08-007 キャラ R SR 黄 浴衣のキョン 2/2 7500/2/1 《SOS団》 《和服》 SY/W08-008 キャラ U 黄 森 園生 1/0 3000/1/0 《メイド》 SY/W08-009 キャラ U 黄 水着のキョンの妹 1/0 4500/1/0 《動物》 《水着》 SY/W08-010 キャラ U 黄 部室のキョン 1/1 5000/1/1 《メカ》 《SOS団》 SY/W08-011 キャラ U 黄 古泉 一樹 2/2 8000/2/1 《超能力》 《SOS団》 SY/W08-012 キャラ U 黄 部室の長門&古泉 2/1 2500/1/1 《宇宙人》 《超能力》 SY/W08-013 キャラ C 黄 クラスメイト国木田 0/0 500/1/0 《特徴なし》 SY/W08-014 キャラ C 黄 エプロン姿のキョン 0/0 1000/1/0 《本》 《SOS団》 SY/W08-015 キャラ C 黄 エプロン姿の古泉 0/0 1500/1/0 《超能力》 《本》 SY/W08-016 キャラ C 黄 クラスメイト谷口 0/0 2500/1/0 《特徴なし》 SY/W08-017 キャラ C 黄 がんばりすぎのみくる&キョン 0/0 3000/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/W08-018 キャラ C 黄 ダンディな執事 新川 1/0 4500/1/0 《執事》 SY/W08-019 キャラ C 黄 キョンの妹&朝倉 2/1 8500/1/1 《動物》 《宇宙人》 SY/W08-020 イベント U 黄 合宿の夜 1/1 EV SY/W08-021 イベント U 黄 雨の日の帰り道 2/1 EV SY/W08-022 イベント C 黄 ふもっふ! 2/2 EV SY/W08-023 クライマックス CR 黄 涼宮ハルヒの朗報 CX 2 SY/W08-024 クライマックス CC 黄 sleeping beauty_ CX 1・風 SY/W08-025 クライマックス CC 黄 閉鎖空間 CX 1・炎 SY/W08-026 キャラ RR RRR 緑 異時間同位体 みくる&みくる(大) 2/1 8000/1/1 《時間》 《SOS団》 SY/W08-027 キャラ RR 緑 ドジっ娘みくる 2/2 2500/2/1 《時間》 《SOS団》 SY/W08-028 キャラ R SR 緑 おめかし鶴屋さん 0/0 1500/1/0 《オデコ》 《八重歯》 SY/W08-029 キャラ R 緑 朝比奈 みくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/W08-030 キャラ R 緑 温泉の鶴屋さん 0/0 2000/1/0 《オデコ》 《八重歯》 SY/W08-031 キャラ R RRR 緑 時をかける少女みくる 1/0 500/1/0 《時間》 《本》 SY/W08-032 キャラ R SR 緑 水着のハルヒ&みくる 1/1 5000/1/1 《団長》 《時間》 SY/W08-033 キャラ U 緑 おめかしみくる 1/0 3000/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/W08-034 キャラ U 緑 ネコミミ 鶴屋さん 1/0 3000/1/0 《オデコ》 《動物》 SY/W08-035 キャラ U 緑 ビーチバレー みくる&鶴屋さん 1/1 7000/1/0 《水着》 《スポーツ》 SY/W08-036 キャラ U 緑 ウェイトレス鶴屋さん 2/2 7500/2/1 《オデコ》 《ウェイトレス》 SY/W08-037 キャラ U 緑 ネコミミ みくる 3/2 10000/2/1 《時間》 《動物》 SY/W08-038 キャラ C 緑 サイン会みくる 0/0 500/1/0 《時間》 《本》 SY/W08-039 キャラ C 緑 SOS団のマスコットみくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《メイド》 SY/W08-040 キャラ C 緑 ウェイトレスみくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《ウェイトレス》 SY/W08-041 キャラ C 緑 バニーガール ハルヒ&長門&みくる 0/0 3000/1/0 《動物》 《SOS団》 SY/W08-042 キャラ C 緑 未来から来たみくる 1/0 4500/1/0 《時間》 SY/W08-043 キャラ C 緑 Xmasパーティ 鶴屋さん&みくる 2/1 8000/1/1 《時間》 《オデコ》 SY/W08-044 キャラ C 緑 ミラクルガール みくる 2/2 9000/2/1 《時間》 《メイド》 SY/W08-045 イベント U 緑 みくるビーム 1/1 EV SY/W08-046 イベント U 緑 任意同行? 1/4 EV SY/W08-047 イベント C 緑 野球大会 2/0 EV SY/W08-048 クライマックス CR 緑 涼宮ハルヒの日常 CX 宝 SY/W08-049 クライマックス CC 緑 禁則事項です CX 袋 SY/W08-050 クライマックス CC 緑 もうボロ儲けだよっ! CX 2 SY/W08-051 キャラ RR 赤 Xmasパーティ ハルヒ&キョン 1/2 5500/1/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-052 キャラ RR SP 赤 SOS団団長ハルヒ 2/2 8500/2/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-053 キャラ R SR 赤 浴衣のハルヒ 0/0 500/1/0 《団長》 《和服》 SY/W08-054 キャラ R 赤 温泉のハルヒ 0/0 1000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-055 キャラ R SR 赤 世界の中心ハルヒ&ちっぽけなハルヒ 0/0 2500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-056 キャラ R SP 赤 “いつも”のハルヒ 1/0 5000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-057 キャラ R 赤 ビーチバレー ハルヒ 2/2 5000/2/1 《団長》 《スポーツ》 SY/W08-058 キャラ U 赤 超編集長ハルヒ 0/0 1000/1/0 《メガネ》 《本》 SY/W08-059 キャラ U 赤 おめかしハルヒ 0/0 2000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-060 キャラ U 赤 退屈を嫌うハルヒ 1/0 4500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-061 キャラ U 赤 浴衣のハルヒ&みくる 1/0 5500/1/0 《和服》 《SOS団》 SY/W08-062 キャラ U 赤 Happy Valentineハルヒ 1/1 5500/1/1 《団長》 《お菓子》 SY/W08-063 キャラ C 赤 両手いっぱいの花束ハルヒ 0/0 500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-064 キャラ C 赤 涼宮 ハルヒ 0/0 3000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-065 キャラ C 赤 ボーカリスト ハルヒ 1/1 2000/1/1 《団長》 《音楽》 SY/W08-066 キャラ C 赤 勝利宣言ハルヒ 2/1 6500/1/1 《団長》 《和服》 SY/W08-067 キャラ C 赤 ネコミミ ハルヒ 2/1 8000/1/1 《団長》 《動物》 SY/W08-068 キャラ C 赤 クラッカー ハルヒ 2/2 9000/2/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-069 キャラ C 赤 トラブルガール ハルヒ 3/2 10000/2/1 《団長》 《本》 SY/W08-070 イベント U 赤 市内探索ツアー 1/3 EV SY/W08-071 イベント U 赤 色褪せた世界 2/1 EV SY/W08-072 イベント C 赤 ただの人間には興味ありません 1/1 EV SY/W08-073 クライマックス CR 赤 Happy Valentine CX 2 SY/W08-074 クライマックス CC 赤 SOS団誕生! CX 2 SY/W08-075 クライマックス CC 赤 サムデイ イン ザ レイン CX 扉 SY/W08-076 キャラ RR RRR 青 宇宙人 長門&朝倉&喜緑 0/0 1500/1/0 《宇宙人》 《本》 SY/W08-077 キャラ RR RRR 青 おめかし長門 3/2 9500/2/1 《宇宙人》 《本》 SY/W08-078 キャラ R 青 長門 有希 0/0 1500/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 SY/W08-079 キャラ R SR 青 眼鏡っ娘 長門 1/0 5000/1/0 《宇宙人》 《メガネ》 SY/W08-080 キャラ R 青 朝倉 涼子 1/1 5000/1/1 《宇宙人》 《武器》 SY/W08-081 キャラ R 青 無口キャラ 長門 2/1 7500/1/1 《宇宙人》 《SOS団》 SY/W08-082 キャラ R SR 青 チャイナドレスの長門 2/2 7500/2/1 《宇宙人》 《ドレス》 SY/W08-083 キャラ U 青 水着のハルヒ&長門 1/0 4500/1/0 《団長》 《宇宙人》 SY/W08-084 キャラ U 青 温泉の長門&みくる 1/0 5500/1/0 《宇宙人》 《時間》 SY/W08-085 キャラ U 青 ビーチバレー 長門 1/1 1000/1/1 《宇宙人》 《スポーツ》 SY/W08-086 キャラ U 青 ギタリスト 長門 2/1 5500/1/1 《宇宙人》 《音楽》 SY/W08-087 キャラ U 青 情報統合思念体の端末 長門 2/2 8500/2/1 《宇宙人》 《本》 SY/W08-088 キャラ C 青 Xmasパーティ 長門 0/0 1000/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 SY/W08-089 キャラ C 青 浴衣の長門&キョンの妹 0/0 1000/1/0 《宇宙人》 《和服》 SY/W08-090 キャラ C 青 エプロン姿の長門 0/0 1000/1/0 《宇宙人》 《本》 SY/W08-091 キャラ C 青 スイカを食べる長門 0/0 2000/1/0 《宇宙人》 《スイカ》 SY/W08-092 キャラ C 青 ネコミミ 長門 0/0 3000/1/0 《宇宙人》 《動物》 SY/W08-093 キャラ C 青 依頼人第一号 喜緑 1/0 2500/1/0 《宇宙人》 《生徒会》 SY/W08-094 キャラ C 青 クールガール 長門 2/1 8500/1/1 《宇宙人》 《本》 SY/W08-095 イベント U 青 しおりの伝言 1/1 EV SY/W08-096 イベント U 青 離れないで 2/1 EV SY/W08-097 イベント C 青 情報連結解除 2/0 EV SY/W08-098 クライマックス CR 青 私のこと、あなたに教えておく CX 2 SY/W08-099 クライマックス CC 青 情報制御空間の死闘 CX 本 SY/W08-100 クライマックス CC 青 うん、それ無理 CX 2 エクストラブースター 発売日:一般発売:2011/01/29(土) 先行発売:2010/12/29(木) (コミックマーケット79 ブシロードブース) カード種類数:全27種(R:9種/C:18種)+パラレル45種(サイン:2種/ホイル:27種/イラスト違い[ホイル]:8種/イラスト違い[ノーマル]:8種) 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 SY/WE09-01 キャラ C 黄 キョン&古泉 0/0 1500/1/0 《超能力》 《SOS団》 SY/WE09-02 キャラ C 黄 星を語る古泉 0/0 2500/1/0 《超能力》 《SOS団》 SY/WE09-03 キャラ C 黄 夜空を見上げるキョン 1/0 4500/1/0 《SOS団》 SY/WE09-04 キャラ C 黄 小学五年生 キョンの妹 2/2 8500/2/1 《動物》 SY/WE09-05 キャラ R 緑 星に願うみくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《メイド》 SY/WE09-06 キャラ R 緑 時間跳躍 キョン&みくる 1/0 2500/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/WE09-07 キャラ R 緑 みくるとの出会い みくる(大) 2/1 2000/1/1 《時間》 SY/WE09-08 キャラ C 緑 元気な先輩 鶴屋さん 0/0 1000/1/0 《オデコ》 《八重歯》 SY/WE09-09 キャラ C 緑 バイト中のみくる 0/0 3000/1/0 《時間》 《カエル》 SY/WE09-10 キャラ C 緑 お花見 みくる 1/0 4500/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/WE09-11 キャラ C 緑 セミ採り合戦 みくる 2/2 8500/2/1 《時間》 《SOS団》 SY/WE09-12 クライマックス C 緑 導く役目 CX 宝 SY/WE09-13 キャラ R 赤 “超監督”ハルヒ 1/1 3500/1/1 《団長》 《SOS団》 SY/WE09-14 キャラ R 赤 お花見 ハルヒ 2/2 10000/1/1 《団長》 《SOS団》 SY/WE09-15 キャラ R 赤 “笹の葉ラプソディ”ハルヒ 2/1 5000/1/1 《特徴なし》 SY/WE09-16 キャラ C 赤 世界を変える少女 ハルヒ 0/0 2500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WE09-17 キャラ C 赤 水着のハルヒ 1/0 5000/1/0 《団長》 《水着》 SY/WE09-18 キャラ C 赤 夏祭りのハルヒ 1/1 7000/1/0 《団長》 《和服》 SY/WE09-19 イベント C 赤 エンドレスエイト 1/1 EV SY/WE09-20 クライマックス C 赤 私はここにいる CX 2 SY/WE09-21 クライマックス C 赤 夏の終わり CX 2 SY/WE09-22 キャラ R 青 観察者 長門 0/0 2500/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 SY/WE09-23 キャラ R 青 魔法使い長門&シャミセン 1/0 2000/1/0 《宇宙人》 《動物》 SY/WE09-24 キャラ R 青 夏祭りの長門 3/2 10000/2/1 《宇宙人》 《仮面》 SY/WE09-25 キャラ C 青 待機モード 長門 1/1 7000/1/0 《宇宙人》 《メガネ》 SY/WE09-26 キャラ C 青 お花見 長門 2/1 8000/1/1 《宇宙人》 《SOS団》 SY/WE09-27 クライマックス C 青 残り二週間の夜 CX 本 トライアルデッキ 発売日:2009/11/21(土) カード種類数:全19種(先行収録:17種/限定:2種)+パラレル2種 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 封入数 SY/W08-T01 キャラ TD 赤 涼宮 ハルヒ 0/0 3000/1/0 《団長》 《SOS団》 4 SY/W08-T02 キャラ TD 赤 両手いっぱいの花束ハルヒ 0/0 500/1/0 《団長》 《SOS団》 4 SY/W08-T03 キャラ TD 赤 浴衣のハルヒ&みくる 1/0 5500/1/0 《和服》 《SOS団》 2 SY/W08-T04 キャラ TD 赤 ボーカリスト ハルヒ 1/1 2000/1/1 《団長》 《音楽》 2 SY/W08-T05 キャラ TD 赤 ネコミミ ハルヒ 2/1 8000/1/1 《団長》 《動物》 2 SY/W08-T06 キャラ TD 赤 勝利宣言ハルヒ 2/1 6500/1/1 《団長》 《和服》 2 SY/W08-T07 キャラ TD 赤 クラッカー ハルヒ 2/2 9000/2/1 《団長》 《SOS団》 4 SY/W08-T08 キャラ TD 赤 トラブルガール ハルヒ 3/2 10000/2/1 《団長》 《本》 2 SY/W08-T09 クライマックス TD 赤 SOS団誕生! CX 2 2 SY/W08-T10 クライマックス TD 赤 サムデイ イン ザ レイン CX 扉 4 SY/W08-T11 キャラ TD 青 Xmasパーティ 長門 0/0 1000/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 2 SY/W08-T12 キャラ TD 青 ネコミミ 長門 0/0 3000/1/0 《宇宙人》 《動物》 4 SY/W08-T13 キャラ TD 青 スイカを食べる長門 0/0 2000/1/0 《宇宙人》 《スイカ》 2 SY/W08-T14 キャラ TD 青 水着のハルヒ&長門 1/0 4500/1/0 《団長》 《宇宙人》 4 SY/W08-T15 キャラ TD 青 温泉の長門&みくる 1/0 5500/1/0 《宇宙人》 《時間》 4 SY/W08-T16 イベント TD 青 情報連結解除 2/0 EV 2 SY/W08-T17 クライマックス TD 青 私のこと、あなたに教えておく CX 2 2 SY/W08-101 キャラ TD 赤 いつものハルヒ&みくる 2/1 8500/1/1 《団長》 《時間》 1 SY/W08-102 キャラ TD 青 いつもの長門 0/0 2500/1/0 《宇宙人》 《本》 1 パワーアップセット 発売日:2016/12/23(土) (ブシロード公認店 限定販売商品) カード種類数:全8種+パラレル8種+特別封入PR1種 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 SY/WP02-01 キャラ PS SR 緑 ひと休み みくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《SOS団》 SY/WP02-02 キャラ PS SR 緑 トナカイ みくる 3/2 9500/2/1 《時間》 《SOS団》 SY/WP02-03 キャラ PS SR 赤 ひと休み ハルヒ 0/0 1500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WP02-04 キャラ PS SR 赤 傍若無人 ハルヒ 1/0 4500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WP02-05 キャラ PS SR 赤 “10th Anniversary”ハルヒ 3/2 10000/2/1 《団長》 《SOS団》 SY/WP02-06 クライマックス PS SR 赤 ある日の部室 CX 2 SY/WP02-07 キャラ PS SR 青 ツリー色のドレス 長門 0/0 1500/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 SY/WP02-08 キャラ PS SR 青 ひと休み 長門 1/0 6000/1/0 《宇宙人》 《SOS団》 プロモーションカード 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 SY/W08-103 キャラ PR 赤 涼宮ハルヒの憂鬱 0/0 3000/1/0 《SOS団》 《団長》 SY/W08-104 キャラ PR 赤 好奇心ハルヒ 0/0 3000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/W08-105 キャラ PR 赤 “Merry Xmas”ハルヒ 1/1 5500/1/1 《団長》 《SOS団》 SY/W08-106 キャラ PR 青 ウェディングドレスの長門 0/0 2000/1/0 《宇宙人》 《ドレス》 SY/W08-107 キャラ PR 緑 ウェディングドレスのみくる 0/0 2000/1/0 《時間》 《ドレス》 SY/W08-108 キャラ PR 赤 ウェディングドレスのハルヒ 0/0 1500/1/0 《団長》 《ドレス》 SY/W08-109 クライマックス PR 緑 団員ボシュウ中! CX 2 SY/W08-110 キャラ PR 黄 長門&ハルヒ&みくる 2/2 7500/2/1 《SOS団》 SY/W08-111 キャラ PR 赤 宇宙に思いをはせるハルヒ 0/0 2500/1/0 《特徴なし》 SY/W08-112 キャラ PR 赤 お正月 ハルヒ&長門&みくる 2/1 7000/1/1 《SOS団》 《和服》 SY/W08-113 キャラ PR 赤 超編集長ハルヒとその助手 1/1 3500/1/1 《SOS団》 SY/W08-114 キャラ PR 青 平穏な日常 有希 1/1 5500/1/1 《本》 《メガネ》 SY/WE09-28 キャラ PR 青 文芸部の有希 2/1 8000/1/1 《メガネ》 《本》 SY/WE09-29 キャラ PR 赤 唯我独尊 ハルヒ 0/0 2500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WE09-30 キャラ PR 赤 夏祭りの夜 ハルヒ 0/0 2000/1/0 《団長》 《和服》 SY/WE09-31 キャラ PR 赤 負けず嫌い ハルヒ 1/0 5000/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WE09-32 キャラ PR 赤 体育祭のハルヒ 1/1 6500/1/0 《団長》 《SOS団》 SY/WP02-09 キャラ PR 赤 夏の眼福 ハルヒ&みくる? 3/2 10000/2/1 《団長》 《SOS団》 SY/WP02-10 キャラ PR 赤 みくるをプロデュース ハルヒ? 2/1 4000/1/1 《団長》 《SOS団》
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古泉が病室を出て行き、部屋の中には俺とハルヒの二人っきりとなった。 ……何だ、この沈黙は? なぜだか全くわからないが微妙な空気が流れる。 おそらくまだ1、2分程度しか経っていないだろうが、10分くらい経った気がする。 やばいぜ、ちょっと緊張してきた。何か喋らないと。 『涼宮ハルヒの交流』 ―最終章― 沈黙を破るため、とりあえずの言葉を口にする。 「すまなかったな。迷惑かけて」 「別にいいわ。けどいきなりだったから心配したわよ。……もちろん団長としてよ」 「なんでもいいさ。ありがとよ」 再び二人とも言葉に詰まる。 「……あんた、ホントにだいじょうぶなの?」 「どういう意味だ?」 「だってこないだ倒れてからまだ半年も経ってないのよ。何が原因なのかは知らないけどちょっと異常よ。 ひょっとして、あたしが無茶させすぎちゃったりしてるからなの?」 確かに、普通はそんなにしょっちゅう意識不明にはならないよな。 けど今回の原因はハルヒだなんて言えねぇし。 どうでもいいが無茶させてる自覚があるならもっと優しく扱ってくれ。 「だいじょうぶさ。もうピンピンしてる。別に体に問題があるわけでもない」 「そう……、ならいいけど」 ハルヒに元気がないな。そんなに心配してくれてたってのか? それともここも実は異世界で、これは違うハルヒだったりするのか?いやいや、そんな馬鹿な。 ……ん?そうだな、そういえば言わなきゃいけないことがあったな。 「ハルヒ、昨日はすまなかったな」 ハルヒは不思議そうな顔で目を向ける。 「だから、別にいいって言ったでしょ」 「……ああ、いや、そのことじゃない。昨日の昼のことだ」 「ああ、……あれね」 途端に不機嫌な顔になる。やっぱかなり怒ってんのか。 「つい、つまらないことでムキになっちまったな。すまん。 けどな、お前からはつまらないことかもしれないけど、俺にとっては結構大事なことだったんだ」 「………」 あのハルヒと同じように黙ったままだ。 「別にSOS団として不思議を探すのは構わん。宇宙人、未来人、超能力者を探すのも構わん。 お前が手伝って欲しいってんならできる限りのことはやってやりたい。できる限りはな。 けど、な。……そいつらを見つけたら、俺は用済みになるのか?」 「そんなことは言ってないでしょ!」 「言ってはないかもしれんが、ひょっとしたらそうなんじゃないかって思ってしまったんだ。 そうしたら、きっと怖くなっちまったんだろうな」 「そんなことあるわけないでしょ。あんたあたしが信じられないの?」 「そうだったのかもしれない。いや、信じられなかったのは俺自身なのかもしれない。 そんなやつらがいる中で、いつまでもお前の側にいられるような資格がないと思ったのかもしれないな」 「そんなことないわ。だってキョンは、……キョンはあたしにとって……。あたしはキョンが……」 「でも、もうそんなことはどうでもよくなった」 ハルヒは驚いて悲しそうな顔になった。心なしか、涙が浮かんでいるようにも見える。 「まさか……もうやめるって言うの?なんでよ!?」 ああ、そういう風に捉えますか。というか言い方がまずかった気はしないでもないな。すまん。 「いや、すまん。そういう意味じゃない。俺はこれからもSOS団の一人としてやっていくつもりだ。 俺が言いたいのは、そのなんていうか……簡単に言うと自信が付いたってこと、か?」 「何言ってるのあんた。全然意味わかんないわよ」 だろうな。俺もよくわからん。どうやって話を進めたらいいやら。 「昨日言っただろ。普通じゃない人間なんて見つかりこないって。あれは本当のことだ。 けど、それはそういうやつらがいないって意味じゃない。こっちからは見つけられないって意味だ。 だっていきなり『お前は宇宙人か?』って聞かれて、はいそうです、って、本物だとしても答えるわけないだろ?」 「じゃあどうしろっていうのよ!」 「別に何もしなくていいと思うぞ。強いて言うなら、そういうやつらが現れるのを願い続けることだな。 そうすれば、お前の周りにいるそいつらは、時がくれば自分からそのことをお前に告げてくれるさ」 「あのねぇ、あたしには気長に待ってる暇はないのよ。時っていつよ?こないならこっちから探すしか――」 俺はハルヒの小さな肩に手をやり、ほんの少しだけこちらに引き寄せる。 「その時ってのは今だ」 「あんた何言ってんの?」 「あのな、ハルヒ。実は俺、異世界人なんだ」 「は?」 さすがに目が点になってるな。そりゃそうか。 「俺は異世界人なんだ」 「ちょっと、あんた。本気で言ってんの?んなわけないでしょ」 「本気だ。俺は異世界人なんだ。まぁそりゃあ普通の人間には簡単には信じられないかもしれないだろうがな。 それにしてもせっかく待ちに待った異世界人が現れたってのに、信じないなんてもったいない話だよな」 「わ、わかったわ。仕方ないから信じてあげるわよ」 なんて簡単に挑発にかかるんだ。こいつは。 「だからな……」 「だから何よ」 ハルヒの肩に置いていた手に、ギュッと力を込める。 やべぇ、めちゃくちゃ緊張してきた。 「俺は普通の人間じゃない異世界人だから、俺と付き合ってくれないか?」 ああ、ついに言っちまった。 「は!?あ、あんたちょっとまじで言ってるの?」 「ああ、俺は大まじだ。お前言ってただろ?普通の人間じゃないやつがいたら付き合うって。ありゃ嘘か?」 「嘘なんかつかないわよ。けど……、まぁあんたが異世界人だってんならしょうがないわね。 わかったわ。そこまで言うなら付き合ってあげるわよ」 意外とすんなりいったな。『あんたが異世界人だっていう証拠は?』とか言われたらどうしようかと思ってたが。 証拠なんてないしな。行き方も知らない。まぁハルヒは実は自分で知っているわけだが。 俺が本物かどうかなんてたいした問題じゃないってことなのか? まぁなんでもいいさ。 「一つ聞いてもいい?」 「なんだ?質問にもよるぞ」 「あんたの言う異世界ってどんな世界?」 どんな世界、か。どう言えばいいものか。ここと変わんねぇんだよなぁ。 「基本的にはこことほとんど同じだな。よくいうパラレルワールドってやつか?人もほとんど同じだ」 「ふーん、てことはあたしとかもいるわけ?」 「ああ、いるぜ。ちゃんとSOS団もある」 「じゃあ、何が違うの?全く一緒ってわけじゃないんでしょ」 そうだな?何が違うんだ?あまり違和感がなかったからな。 「なんだろうな。人の性格とかに微妙に違和感があるくらいか?」 「例えば?」 例えば、か。何かあったかな。 「あ、長門の料理がうまかった。昼の弁当もうまかったし」 ハルヒの目付きが変わる。 「へえー、有希に弁当とか作ってもらってたんだぁ」 いや、まて、それはだな。いろいろあって、とりあえず落ち着け。な。 「……まぁいいわ。そっちのあたしはどんな感じ?」 どんなって言われてもなぁ。確かにちょっと違ってはいたが。力のこともあるし。 「……お前をさらに強気にした感じだ」 としか言いようがない。 「なるほどね。まぁいいわ」 「というかお前案外簡単に信じるんだな」 「嘘なの?」 「いや、そういう意味じゃないが」 「ならいいじゃない。あんたが本当って言ってるならそれでいいのよ。何か問題あるの?」 「いや、ちょっと話がうまく行き過ぎてて。ハルヒ、本当に俺でいいのか?」 「あたしがいいって言ってんだからそれでいいのよ。何?取り消したいの?」 「そんなわけあるか!俺はお前のことが、……本当に好きなんだから」 空いているもう片方の手もハルヒの肩に置く。 「ならさっさと好きって言いなさいよね。全く。こっちだって不安なんだから」 「そうだな、すまん。……ハルヒ、好きだ」 「あたしもよ。……キョン」 両の手に少し力を入れて引き寄せると、それに従いハルヒも近づいてくる。 ……あと20cm。 俺が顔を近付けるとハルヒも顔を近付ける。 ……あと10cm。 残りわずかのところでハルヒが目を瞑る。 ……あと5cm。 顔を少し傾け、目を閉じているハルヒの唇に俺の唇をそっと重ね―― コンコン! バッ!! ドアがノックされる音に慌ててハルヒの体を引き離す。 「入りますよ」 そういって古泉が入ってくる。そういえばジュースを買いに行ってたんだっけ? というか手ぶらじゃねぇか。どういうことだ?その満面の笑みは何だ? 「いえいえ、なんでもありませんよ。」 古泉の後ろには隠れるようにしている二人の姿が見える。 お見舞いのフルーツセットと、それとは別にお見舞いの品の袋を持った朝比奈さんとなぜか大量の本を持った長門の姿が。 「長門、それに朝比奈さんも。来てくれたんですね」 「……来ていた」 「キョ、キョンくん、具合はどうですかぁ?」 ん?なんか様子が変だ。朝比奈さんに至っては顔が真っ赤だし。 ってハルヒも顔が真っ赤になってるな。しかも口を開けたまんま固まっている。どういうことだ? 「古泉、何かあったか?ジュースはどうした?」 「ああ、そういえば飲み物を買いに出たのでしたね。うっかりしてました」 「は?じゃあお前はジュースも買わずに今までどこ……って、お前まさか!?」 「いやあ、この部屋を出たところで偶然このお二方と会いましてね。中に入ろうかとも思いましたが……ねえ?」 と、長門の方に振る。 「……いいところだった」 嘘だろ?まさかこいつら全部聞いてたんじゃ。 「……古泉、どこからだ?」 「そうですね。『すまなかったな。迷惑かけて』からですね。最初の方でしょうか?」 最初の方っていうか一番最初だぜこのヤロー。 ……そこから全部聞かれてたってことなのか?そんな馬鹿な。ぐあっ、死にてえ。 思わず頭を抱える。ハルヒはまだ固まっている。 「キョンくん、気を落とさないでください。だいじょうぶですよぉ。カッコ良かったですぅ」 いえ、朝比奈さん。それ全くフォローになってませんから。 「まぁいいじゃないですか。一件落着ですよ」 くそっ、こいつに言われると腹立つな。 どうでもいいけどお前間違いなく開けるタイミング狙ってただろ。 「さて、なんのことでしょう?」 くそっ、いまいましい。 ハルヒいい加減正気に戻れ。 「わ、わかってるわよ。うっさい」 まぁいいさ。これでこの一件は無事に終わったってわけだ。やっぱりこういう世界が一番だな。 あんな悪夢のような時間は出来ればもう過ごしたくないものだ。 俺はここでこのSOS団のみんなと俺は楽しく過ごしていくさ。 だからそっちのSOS団もそっちで楽しくやってくれ。そっちの俺たちも仲良くな。頑張れよ、『俺』。 「とりあえず元気そうで良かったですぅ」 「安心した」 二人からちゃんとしたお見舞いの言葉をもらっていると、 「やっぱりキョンを雑用係にして酷使し過ぎたのがまずかったのかしらね」 だから自覚あるならやめろっての。 ハルヒは朝比奈さんが持ってきた俺へのお見舞いのメロンを食べ終えて言った。 ってお前、そのメロン全部食ったのかよ。それ俺のだろ? 「そうかもしれませんね」 古泉、お前思ってないだろ。とりあえずその手に持ったバナナの束を置け。 「だからキョンには新しい役職を与えて、雑用はみんなで分担することにするわね」 そう言ってハルヒはどこからともなく腕章とペンを取り出した。 って、どこから出したんだよ。ってかなんでそんな物持ってんだよ。 キュキュっとペンを走らせ、それを俺に突きつける。 「これでどう?嬉しいわよね」 渡された腕章には大きな字でこう書かれていた。 『団長付き人』 やれやれ、これからも大変そうだな。 今日からは俺も異世界人、これでSOS団の一員として新しくスタートってわけだ。 確かに向こうに行ってた時間は悪夢のような時間だったかもしれない。 けど、こうなってみると、この結果になったのは間違いなく異世界のおかげと言えるだろう。 異世界でのSOS団の出会い、ハルヒとの出会いがなければ俺はハルヒに告白なんてできなかったたろう。 ハルヒ。ひょっとしてこれもお前の望んだとおりの結果なのか? 異世界との交流を通して、俺に答えを出すことを望んだのか? まぁなんでもいいさ。 お前も望んでくれるなら、俺はいつまでもハルヒの隣にいたいと思う。 「ああ、ありがたく頂くよ。これからもよろしくな」 さて、これからはどんな新しいものとの交流が待っていることやら。 今から楽しみだぜ。 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 「いや、それ朝比奈さんが俺のお見舞いに持ってきたやつだから。しかも俺は食ってないぞ」 周りを見渡す。長門が食べていた。 長門はハルヒの方を向いて僅かだけ微笑みを感じさせる顔で言う。 「プリンくらいはあなたから貰ってもいいはず」 ◇◇◇◇◇ 最終章後編へ
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…目的地に着いたのはいいが。未だ返信が来ないのはなんともな… 果たしてチャイムを鳴らしてしまっていいものだろうか? …まあ、もう来てしまってるわけだからな…。とりあえず、俺はインターホンを押した。 …… …… 一向に誰かが出る気配はない。…日曜だから家族総出でどこか遊びにでも行ってるのか?だとしたら、 メールが返ってこないのは一体どういうわけだろうか。単にマナーモード、ないしはドライブモードで 気付かないとか…そんなとこか? …まさかとは思うが、例の未来人たちに襲われたってことはねえよな…? 「…ハルヒ!いるか!?返事しろ!?」 玄関に詰め寄る。…やはり音沙汰が何もない上、玄関のカギは閉まっている。 「キョン…あんた、こんなトコで何してんの…??」 ふと背後から声をかけられる。そして、その姿を確認した俺は安堵の表情を浮かべる。 「…ハルヒか!無事だったんだな…。」 「無事って…?ていうか、人んちの玄関の前で叫んでみたりドアノブをいらってみたり… あんた傍から見れば完全な不審者よ?見つけたのがあたしでよかったわね!」 人が心配になって見にきやがったら…不審者だと!? ああ、確かにそう思われてもおかしくない状況だったかもな。素直に認めます、はい。 「なんとなくお前の顔色を伺いにきたんだよ。もう回復したのかなーなんてさ。」 「だからさ、大したことじゃないって言ってるでしょ。その証拠に…ほら。」 ハルヒが左手に提げている買い物袋を俺に見せる。 「お前買い物行ってたのか?」 「そうよ、夕食の買い出しにね。夢タウンまで。」 「夢タウンって…こっから3、4キロくらいはあるぞ?そんな遠くまで行ったのか。」 「大安売りの日だったからね。背に腹は変えられないわ!」 なるほどな…まあ、そんな遠方まで自転車で買いに行けるような体力があるんなら、 特に俺が心配するようなこともないのだろう。 「そうそう、俺は一応お前んち行くってメールしたぞ。なぜ返信しなかったんだ。」 「あ、そうなの?それはゴメンね。携帯、家に置き忘れてきちゃったから。」 そういうことか… 「まあ別にいいけどよ。携帯ってのは何かの非常時とかに有効だし、 なるべくなら肌身離さず持ち歩く癖はつけてたほうがいいと思うぜ。」 「ふーん…何?このあたしがどこぞの馬の骨とも知れない輩に襲われる心配でもしてるっての?」 お前をつけ狙ってる未来人がいるから注意しろ!とは言えねえなぁ… 変に言って刺激を与えてしまえば逆効果になる恐れだってあるし… 「いや、まあ、念のためだ念のため。」 「ま、持ってるに越したことはないもんね。次回から気に留めておくわ…。」 …… …気のせいだろうか?どこかしらハルヒの声が弱弱しく聞こえるのは… 俺の考えすぎか。 「…あ」 「どうしたハルヒ?」 「忘れた…」 「忘れた?何を?」 「カレー粉…」 …… どうやら今日のハルヒの夕食はカレーらしい。そういや買い物袋にはじゃがいもやにんじん、牛肉が ちらほら見える。それにしたって、カレーの基本であるカレー粉を忘れるなんてよっぽどだな。 しかも、それがあの団長涼宮ハルヒときた。やっぱまだ本調子じゃねえんじゃねえか?と疑いたくなる。 「あんた今あたしをバカだと思ったでしょ!!?」 「あー、いや、気のせいだ。気のせいだぞハルヒ。」 「まさかあんたの前でこんな失態を晒すなんてね…不覚。」 「気にすんなよ。人間誰にだって起こりえることさ。」 「あたしだって、あんなことなけりゃ気疲れせずにす…」 ん?何だって? 「いや…何でもないわ。とにかく、買ってきた食材を家に置いてくるから キョンはそこで待ってて。どうせヒマなんでしょ?」 そう言ってハルヒはカギを開けて家の中へと入っていく。…あの調子だと、 どうやら俺を否応にも買い物に付き合わせるつもりらしい。うむ、まったくもってハルヒらしい。 …まあ、もともと今日はハルヒと一緒にいようと思ってたから、結果オーライなんだが。 …それにしてもさっきハルヒは何を言おうとしたんだ?気疲れ?もしかして昨日長門が言っていたような… ハルヒを昏睡状態に陥れた電磁波とかいうやつが今だ尾を引きずってんのか?いや、それは違うな。 ハルヒをタクシーで送ったあの夜、特にハルヒから何かしらの異常を報告された覚えもないし… 時間が経って悪性の症状を引き起こしたにせよ、長門曰く…異常波数を伴う波動だ。 ならば、仮にそうであるなら相当深刻な事態に陥ってるとみて間違いないはず。 ところが、ハルヒは軽いノリで『気疲れ』という単語を会話に混ぜてきたではないか。この時点で すでに決着してるような気もする。粗方、テストで悪い点とったとか暖房のエアコンが故障したとかで 気落ちしたってとこだろう…頭脳明晰ハルヒ様なだけに前者はありえないがな。例えだ例え。 操行してる内にハルヒが中から出てきた。どうやら用事は済ませたようだ。 「じゃ行きましょ。」 「それはいいんだが、どこへ買いに行くつもりだ。まさか、また夢まで行くのか?」 「まさか。一個買うだけにそこまで労力は強いられないわ。近くのスーパーで十分よ!」 そりゃ非常に助かる。あんな距離、とてもじゃないが自転車で移動する気になれない… あれ?俺ってこんなにも体力のないヤツだったっけか?いつもならあれくらいの距離どうってことないだろ? いや、体力とか以前に元気が沸いてこな… …ああ、そうか。ようやく気が付いた。 今日まだ何も食べてねえじゃねえか俺…何かだるいと感じてたのはこのせいだったか。 「あんたさ、もうお昼食べたりしたの?」 ハルヒが尋ねてくる。 「昼飯どころか今日はまだ何も食ってねえんだ…。」 「は?何それ、バッカじゃないの??もう3時よ?? 普通朝飯やおやつの一つ二つくらいは食べてくるでしょうに…。」 哀れみの目でこちらを見つめてくるハルヒ。そんな目で見つめるな!仕方ねえだろ…起きたのが 2時過ぎだったんだしよ。まあ、これについてはハルヒには言わないことにする。まさかお前の今後について 本人抜きでファミレスで深夜遅くまでメンバーと会談してたなんて、口が裂けても言えない。 「運が良かったわね、あたしもまだ食べてないのよ。カレー粉買ってくる前にどこかに食事しに行きましょ!」 それは助かるぜ。今の俺には食欲は何物にも代え難い。 とりあえず、安いトコが良いってことで俺たちは最寄のファーストフード店へと足を運んだ。 看板にはMの文字が大きく書かれている。 「ダブルチーズバーガーのセットお願いします。飲み物は白ぶどうで。」 「あたしはテリヤキチキンバーガーのセットを。飲み物はファンタグレープで!」 しばらくして注文の品が届いた。俺たちは空いてるテーブルへと移動する。 …… おお、向こうの壁にドナルドのポスターが貼られているではないか。…だから何だという話だが。 「キョンどこ見てんの?…あら、ドナルドじゃない。」 最近のことだったろうか、俺の部屋に入ってきたと思いきや、いきなり 『ねえねえキョン君見て見て~!らんらんるーだよ~♪』とか言って万歳ポーズをとってきた妹の姿が 目に焼き付いて離れない。そういやそんなCM見た覚えはあるがな…妹曰く、これは嬉しいときにやるもんだとか。 それと、地味に学校で流行ってるんだとか何とか…なんとも混沌とした世の中になったもんだ…と俺は思った。 「そういえば、どうしてドナルドってマスコットキャラクターになんか成れたのかしら?」 「どうしてって…マクドナルドがそういう企画案を出したからだろ?」 「あたしが言いたいのはそういうことじゃない。仮にも国民皆に知れ渡っている有名チェーン店でもあるマックが、 どうしてこんな世にも恐ろしい顔をもつピエロなんかをイメージキャラクターにしたのかってことよ。」 世にも恐ろしい顔って…ドナルドに失礼だぞお前…。 いや、待てよ… 前言撤回、確かに怖い。 夜道を歩いていたとして真後ろにドナルドがいるとこを想像したらヤバイ。 就寝中ふとベッドの側で誰かが立っている気配があったとして、それがドナルドだったらヤバイ。 鏡を見たとき後ろには誰もいないのにドナルドの顔が映ってたりしたらヤバイ。 他にも…って、キリがねーな。 「百歩譲って、これがカジノとかパチンコみたいに大人客が中心の産業なら別にいいのよ。 問題なのはマックは子供たちからも絶大な支持を受けているってとこ。純粋無垢な子供たちが… 果たして妖怪ドナルドの顔を好き好んで食べに来たりするかしら?万一にもいたとすれば、 その子は精神科に見てもらうべきね。間違いなく病んでるわ。」 …ハルヒの言い分はめちゃくちゃなように見えて、実は結構筋は通ってる感じがする…まあ、さっきも 言ったように、俺ですら捉えようによってはドナルドは怖い存在だ。ましてや小さな子供たちは言うまでもない。 「言いたいことはわかるぜ。たいていマスコットキャラクターと言ったらカワイイ風貌してるよな。」 「そうなのよ。だから謎なの…これこそ不思議ってやつ?SOS団もようやく不思議らしいものを見つけたわね。」 おいおいそんなことで不思議になっちまうのかよ…お前の思考はいまいち理解できん。ドナルド様様だな。 …… 「あれだな、こりゃ発想の転換が必要なのかもしれねえぞ。」 「どういうこと?」 「俺の妹がつい最近ドナルドのらんらんるーってマネやってたんだよ。結構面白がってやってたぞ。」 「妹ちゃんが??」 「ああ。そこで俺は思ったんだが…例えばマックは子供、中高生、リーマン、家族と言った様々な顧客層を 開拓してる。つまり大衆向けチェーン店なわけだな。で、たいてい大衆向けともなれば、イメージキャラクター像も しだいと絞られてくるものだ。ポケモンやドラえもん、サンリオキャラのように愛くるしい容姿をしたものにな。」 「じゃあ尚更ドナルドはおかしいじゃないのよ。」 「そうだな。だから発想の転換だ。例えば、柄の悪い不良が… 公園で鳩や犬にエサをあげてるシーンを見かけたとしたら、お前はどう感じる?」 「漫画とかでありがちなパターンね…まあ、一気に印象はよくなるわ。」 「じゃあ、普段から動物たちにエサをあげている人と今言った不良…印象の上げ度合はどちらが大きい?」 「上げ度合と聞かれれば…後者かしらね。」 「そこなんだよ。見た目が怖いやつほど実際に良いことをしたときは周りから絶賛されるもんだ…人間心理的にな。 もちろん、普段から良いことをしてる人のがいいには決まってる。ただ、そのギャップの度合でついつい 錯覚しちまうもんだ。普段何らかのマイナスイメージをもってるヤツなんかに対しては…特にな。」 「つまり、ドナルドにもそれが当てはまるってこと?」 「そういうこった。よくよく考えてみれば、ただの芸人がふざけたことしたって当たり前すぎて何の面白味もないが、 おどろおどしいお化けピエロがらんらんるーをしてしまった場合は話は別だ。ネタ的要素が大きいが… その分、面白さの度合は一気に跳ね上がる。」 「…そうね!いつもヘラヘラしてる谷口がやったって『相変わらずバカなことやってるのね』 の呆れた一言で終わるけど、キョンが『らんらんるー』やってたらなんかすっごく面白そう! 普段おとなしくて我が強い人間なだけに…くっく…想像したら笑いが…あ…あっは…は… キョン、どうしてくれんの…よ、あんたのせいよ!あははは!!」 はあ… ホントにもう… そんなに俺のらんらんるーを見たいのなら、いくらでも見せてやろう。そんときはお前の夢にまで 出張するくらい洗脳してやるから覚悟しておけよ。悪夢を見てから悲鳴を上げたって、もう手遅れなんだからな? とまあ、冗談は置いといてだな…いくらなんでも谷口はそこまでバカじゃないぞ。友として、谷口の名誉のためにも 一応言わせてもらう。あいつは一見バカなように見えて、実際は越えてはならない境界線は常に把握している 立派なホモサピエンスだ。え?もしらんらんるーをしたらどうするかって?そんときゃ絶交だ。 「おい、国木田、あそこにドナルドの写真が映ってるぜ!」 「あー、そうだね。」 「そういやさ、最近ドナルドの…あるネタがブームになってるって知ってるか?」 「え…知らないなあ…谷口は知ってるのかい?」 「おうよ!流行を先取りした俺に知らないものなんてねーんだよ!」 …何か、後ろのほうで見知った声がするのは気のせいか?いや、気のせいだと思いたいんだが。 「あら、あれ谷口と国木田じゃない。あいつらもココに来てたのね。」 …… 「そのネタっていうの何なのか見せてほしいな。」 「じゃあ、しかとその目に焼きつけよ!らんらんるー!!!」 …友情決裂。さらば谷口、てめーとは金輪際絶交だ。 「なかなか面白い芸だね。あれ…あそこに座ってるのはキョンと涼宮さん?」 「…え…?」 国木田がその言葉を発した瞬間だったろうか、谷口の顔がまるで 頭上からカミナリを落とされたかの如く硬直してしまっているのはこれいかに。 「あいつ…本当にらんらんるーやったわよ?やっぱ谷口ってバカだったのね。」 「ハルヒよ、とりあえず同意しとく。」 「お、お前らどうしてココに!?」 谷口が紅潮した顔で咆哮する。あまり大声を出すな、他の客に迷惑だろうが。 「どうしてって、ただお昼を食べに来ただけよ。悪い?」 「そ、それもそうだな…はは…は…」 谷口が生気を吸い取られるかのごとく屍と化していくのが見てとれる。そんなに俺とハルヒに 見られたのがショックだったか…まあ、せめてもの慈悲として見なかったことにするから安心しろ。 「谷口さ、今はキョンと涼宮さんには話しかけないでおこうよ。二人ともデートしてるみたいだしさ。」 国木田よ…お前はお前でどうして火に油を注ぐようなことを言うのか… それも、俺たちにちょうど聞こえるくらいの音量で。 「な、何言ってんのよあんた!?何か勘違いでもしてんじゃないの!??」 言わんこっちゃない。団長様乱心でござるの巻。せっかくの温和な雰囲気がぶち壊しだ… とりあえず国木田、来週の月曜顔を洗って待ってろ。 というわけで、俺たちはどこぞやの二人組のせいで早々と退散を余儀なくされた。 久々のハンバーガー…もっと味わって食べたかったぜ。 「あー、なんなのあいつら!?落ち着いて食事もできなかったわ!」 気持ちはわかるが、お前もお前で過剰に反応しすぎな気もするがな…。 「まあまあ、気を取り直してスーパー行こうぜ。夕食のカレーこそはのんびりと食せばいいじゃないか。」 「…それもそうね。」 そんなわけで、俺たちはカレー粉購入のため、スーパーへと立ちよった。早速カレーコーナーへと向かう。 「あったあった、これよこれ!」 カレー粉を手に取るハルヒ。…辛口か。 「…キョン、カレーらしさって何だと思う?」 「…辛さか?」 「そうそう!辛さよ辛さ!辛口ほどカレーらしさを追求してるものもないわ!」 …ハルヒもカレーに対して何かしらの情熱をもっているのであろうか?長門、よかったな。こんな身近に ライバルがいたなんて、いくら万能長門さんと言えども想定外だったはずだ。とりあえず、突っ込みを入れとく。 「それは、単にお前が辛いもん好きってだけの話だろう…。」 「わかってないみたいね。まあ、あんたも食べてみれりゃわかるわよ。」 「へいへい、今度食べてみますとも。」 「何言ってんの?今から食べるのよ。」 …? 「つまりアレか…?お前が作るカレーを、俺がこれから食べるってことか?」 「そゆこと。どうせこの分量じゃ確実に一人分以上出来上がっちゃうし、両親も 仕事の都合で今日は帰ってこれないから、誰かに食べてもらわないとこっちが困るのよ。」 そういうことですかい。ま、せっかくの機会だし、ありがたく食させてもらうとするぜ。 後で家に連絡しとくとしよう…夕食は外食で済ますってな。 …… カレー粉を手に入れた俺たちは、特に寄り道をすることもなくハルヒ宅へと向かった。 岐路の途中で、俺は自宅へと先ほどのメッセージを伝えるべく電話をかけた。まあ、伝えたはいいものの 『朝6時に帰ってくるとは何事だ!?』とか『昼飯食べずにどこ行ってたの!?』とか散々怒られてしまったのは 秘密だ。いや、当然っちゃ当然なんだよな…おかげで思ったより長い電話となってしまった。 ハルヒが一人手持無沙汰になっているではないか…。 電話している最中に気付いたことなのだが、何やらハルヒは首をキョロキョロさせていた。 決して俺の方を見ているわけではなかったらしい。方向としては後ろか…後ろに何かあるのか? と思い、俺も振り返ってみたが…特に変わった様子はなかった。 電話を終えた俺はハルヒに問いかけてみた。 「なあハルヒ、一体どうしたんださっきから?」 「あ、いや、何でもないわよ…」 「さては、後ろ首や背中がかゆくて仕方なかったんだろう?どれ、俺がひっかいてやろう。」 「な、なに許可なく体に触れようとしてんのよ!?このセクハラ!」 「じゃあ許可があれば触ってもいいわけか?」 「こんの…変態!!」 あー、ついには変態呼ばわりか。それはきついな… まあ、お前の緊張をほぐそうと思っての行動だったんだ、大目に見てくれよ。 …… ハルヒが緊張しているのには理由がある。俺も先ほどまでは 単なる気のせいとしか思ってなかったんだが…やはり何かおかしい。 妙に違和感を感じるのだ…俺たちの後ろで。 気配が… …… 単刀直入に言おう。俺たちは何者かにつけられている。 そいつの姿を確認したわけではない。しかし、どう耳を澄ませたって…俺たち二人以外の足音が 後方から聞こえるという、この奇妙な事実…音の反響とかそういうわけでもない。 ただ一つ言えること。それは、早いとこハルヒ宅へと帰還したほうが良さそうだということだ。 さて、家へと着いた。 「早速作ろうっと。」 手を洗い、颯爽とキッチンへと向かうハルヒ。顔は笑ってはいるが…内心はある種の恐怖を 感じているに違いない。もしかして、昼に会ったときから何か様子がおかしかったのはこのせいか? …まさかとは思うが、ストーカー被害にでも遭ってるのか…? …… まあ、その是非を今ハルヒには問うべきではないだろう。あいつは今カレー作りに勤しんでんだ… その熱に水をさすような野暮なマネは…俺はしたくない。とりあえず、聞くのなら 夕食を食べ終わってからでも十分間に合うはずだ。俺も、今だけはこのことを忘れることにする。 …さて、俺は何をすべきか。さすがにハルヒがカレーを作っている横で、一人テレビを視聴するのは 何かこう…罪悪感が…。かと言って、キッチンに入って手伝おうと言ったところで足手まといだろう。 なんせ、食材や調理器具の場所が一切わからないのだから。つっ立ってるだけで邪魔なだけである。 …… まあ、何もしないよりはマシか。手を洗い、キッチンへと入る。 「あら、キョン手伝ってくれるの?」 「ああ。できることがあればな。」 …不覚、エプロンをまとったハルヒに一瞬ときめいた。 「じゃあそうね…このたまねぎとにんじん、じゃがいもを水洗いしててちょうだい! で、これ包丁…暇があるならたまねぎも切っててもらえると嬉しいわ。」 「おう、任せとけ。」 「あたしはナベに油をひいて、あと塩水でも作っとく。」 「塩水??一体何に?」 「いいからいいから、自分の作業へと戻る!」 へいへい。とりあえず水洗いに専念するとする。 …… 大体終わったか…時間もあるし切るとするかな。ハルヒは…というと、りんごを小さくスライスしていた。 …デザート?にしてはやけに小さすぎる。ああ…なるほど、さっき言ってた塩水につけるつもりなんだな。 それでアクをとり、カレーに入れるって魂胆か。…ん? 「ハルヒよ、お前辛いカレーが好きとか言ってなかったか?」 「そうだけど、どうして?」 「そのりんご、カレーの中に入れるんだよな。りんごはすっぱさもだが、同時に甘さも引き出すぞ。」 「ちっちっち、甘いわねキョン、あたしをなめてもらっては困るわ!単に辛さだけを追求するほど、 あたしは単純な人間じゃないのよ!確かに本質は辛さ…でもね、それにちょっと工夫をこなすことで、 辛さの中に甘さを見出せるおいしいカレーを作ることができるの!覚えときなさい!」 何やら言ってることが意味不明だが…とりあえずハルヒさんの情熱に、俺は感銘を受けておくとする。 そんなことよりたまねぎだ…こいつ、目から涙が出るから嫌いだ。何か良い方法はないものか… まあ、臆していても仕方ない、とりあえず切ろう。 …… くっ…涙が… 「キョ、キョン!?何やってんのよ!?」 「何って泣いて…いや、違った。見ての通り切ってんだがな。」 「じゃなくて、どうしてみじん切りしてんのかって聞いてんの!」 あ… ああああああああああああっーーーーーー!! しまった…カレー料理だということをすっかり失念してしまっていた… 「すまんハルヒ…申し訳ない。」 「…ま、いいけど。小さなたまねぎってのも、たまにはいいかもね。」 おや、すっかり怒鳴られるかと思ったが…それどころかフォローまでされてしまったぞ? なぜ上機嫌なのかは知らないが…反動で明日にもアラレが降りそうで怖いな。 「じゃ、今度はにんじんとじゃがいも頼むわね。はい、これ皮むき機!」 すでに中火でナベを熱しているから、おそらくもう少ししたらたまねぎと牛肉、 そしてにんじん、じゃがいもってな段取りか。それまでには間に合わせねえとな。 「おう、今度こそ任せとけ!」 早速にんじんとじゃがいもの皮むきに取り組む俺。 …… ふう…慣れない作業はきついぜ…普段あんま料理などしたことのない身なんで特にな。 ハルヒはというと、すでに俺が切ったたまねぎと牛肉をナベへと入れ、しゃもじで混ぜている段階だ。 こりゃ急がねえと… 「キョン、別に焦る必要はないわよ。それでケガでもしたらバカみたいだし。 何かあったら弱火にすればいいだけよ。」 「お前が俺の心配すんなんて珍しいな。いつもなら『早くしないと承知しないわよ!』とか言うそうだが。」 「へえ…?あんたはそう言ってほしいわけ?そう言ったってことは、そう言ってほしいのよね?」 「すまん。俺が悪かった…。」 やっぱりいつものハルヒだった。 …… よし、なんとかむき終わった。あとは切るだけだ…!おっと、 ここで焦ってはいけない。さっきのたまねぎのような失敗をしないためにもな。 「ハルヒ、にんじんとじゃがいもの切る大きさはカレーの場合、 人によって好みがあるんだが、お前はどのくらいの大きさがいいんだ?」 「そうね…別に大きくても構わないわよ。」 「了解したぜ。」 仰せの通り、俺はにんじんとじゃがいもを大雑把に乱切りする。 「どうだハルヒ!?今度はOKだろう?」 「あら、キョンらしさが出てていいんじゃない?及第点よ。」 キョンらしさって何だ?大雑把に乱切りされた雑な形…なるほど、これが俺らしさか。意味がわからん。 「たまねぎと牛肉の色合いもそろそろ良い頃ね。キョン!にんじん、じゃがいもを入れてちょうだい!」 「おう。」 ジューッと音をたてて食材がナベに転がり落ちる。これは美味いカレーにたどりつけそうだ。 「さーて、今度は……むむ、キョンにしてもらうことは特にもうないわね。」 「そうなのか?」 「ええ。後はあたし一人がナベの番をしてたら事足りるし。」 「そうか…あ、そういやご飯はどうした?」 「あたしが忘れるとでも?昼にとっくに保温済み。いつでも炊きだちで取り出せるわ。 ってなわけでお疲れ様、キョン。リビングにでも行って休んどくといいわ!」 「まあ、やることがないなら仕方ないか。また何か 手を借りたいことがあれば呼んでくれよな。カレー頑張れよ。」 「あたしを誰だと思ってんの?あんたは大船に乗ったつもりで構えときゃいいのよ!」 素直に『うん、頑張るね!』と返せばいいものを…ま、いいか。それがハルヒだもんな。 よくよく思い返してみれば、今日のハルヒはいつもよりおとなしく、そしてお淑やかなほうだったじゃないか…? これ以上ハルヒに対して何かを望むのは、それこそ贅沢というものだろう。 そんなこんなで俺はリビングへと向かい、ソファーに腰を下ろすのであった。 ふう…ようやく一息ついたな。カレーができるまでのしばしの間ボーッとしとくとするか… 何やらいろんなことがありすぎて疲れたぜ…。思えばここ2、3日は随分と濃い日々だったのではないか? 今こそこうやって、ハルヒと平凡にカレー作りを営んでいるが…。 ヒマだしいろいろと回想してみるか。まず事の発端は何だっけか?そうだ、震災で町が崩壊する 夢を見たんだ。それから…ハルヒから音楽活動についての発布があったな。しまった… そういやメロディー作ってこなくちゃいけなかったんだよな。いろいろあって忘れてた。 それから…そうだ、未来には気をつけろみたいな趣旨の手紙を下駄箱で入手したんだっけか。 その後、朝比奈さん大に会って藤原には気をつけろと言われ… …… もしかして、俺たちをさっきつけていたのは藤原…ないしはその一味か? だとしたらハルヒの監視ってことで十分説明もつくな。 回想の続きに戻るが…その後家に帰って寝て…今度は地球が滅ぶ夢を見てしまったと。翌日SOS団で バンド活動に取り組もうとしてた矢先にハルヒが倒れる…それがきっかけで夜緊急集会が開かれたと。 それから…俺は夢の中で過去の自分を垣間見て、目を覚ましたのちに長門と古泉にそのことを話して… …長門と古泉が俺を呼びだした理由、まだ聞いてなかったな。電話じゃなく口頭で話すつもりだったとこを見ると、 それなりに重要性を秘めた話だったのではないかと見受けられるが…。気になる、後で電話でもして聞いてみよう。 で、その後俺はハルヒの家に行き、途中で何かしらの気配を感じながらも家に帰り、そして今に至るというわけだ。 …… ハルヒが見せてくれた三度の夢、そして長門や古泉による解説等のおかげで…大体状況は つかめてきたのだが、いかせん未だ腑に落ちない点が多い。不明なものが多すぎるんだよ…。 例えば下駄箱に入っていた例の手紙。未来に気をつけろってのが何のことなのか…未だにわからん。 『未来』などという抽象的単語はできるだけ使わないでほしいね。無駄に、処理に時間がかかる。 その後朝比奈さん大から藤原に気をつけろと言われるわけだが、じゃあどうしてあんな手紙を入れたのかと 問い詰めたくなる。あの手紙の差出人が彼女じゃなかったのだとしたら、それもわかるが。だが、その場合 一体誰があんな手紙を?誰が何のために朝比奈みくるを偽って俺に手紙を?いや…あの執筆は 前に俺が見た朝比奈さん大と同じだったような気がする…じゃあやっぱりあの手紙は朝比奈さん大が …やめよう。頭が混乱してきた。 他は…ハルヒを気絶させた犯人は誰なのかってこと。朝比奈さん大の忠告を鵜呑みにするのであれば、 犯人は藤原一派だと一目瞭然なのだろうが…そもそもだ、俺自身何かしらのステレオタイプを抱いている 可能性がある。例えば、状況証拠から考えて犯人は未来人だと勝手に決め付けていたが…本当に犯人は 未来人なのだろうか?そうである場合は藤原一派だと断定できるものの、もしそうではなかったら? …考えたって悪戯に頭を疲弊させるだけだな。 後は、長門と古泉が俺に何を告げようとしていたのかってことだ。 まあ、これはさして重大な案件でもないだろう。本人たちに聞けばわかることなのだから。 そして最後は、俺たちをつけていた輩が一体誰なのかという…ハルヒを気絶させたヤツと同一犯と見て 間違いないんだろうが…。とりあえず事態の進展を待つ他ない、か。闇雲に一人で考え込んでたって、 次々と新たな可能性が生まれるばかりでキリがねえ。かといって、真相がわかるまで何もしない というわけにもいくまい。常に冷静に…氾濫する情報の取捨選択に徹して、なんとしてでもハルヒを守り抜く。 それが…今の俺にとっての最善であるはずだ。俺はそう固く信じてる。 「キョン!できたわよ!お皿出すの手伝ってー!」 おお、ようやく待ちに待ったカレーの完成か!今行くぞ。 「「いただきまーす。」」 合掌する二人。 …… 「どうキョン?味のほうは?」 「悪くないんじゃないか。十分食えるぞ。」 …しまった、この言い方では…まるで【ハルヒは料理が下手だとばかり】 と暗に示唆してるようなものではないか!?弁解しておくが、決してそんなことは思っちゃいない。 『涼宮ハルヒ』と聞いて思い浮かぶものは何だ?たいていは奇人変人、天上天下、唯我独尊、ギターボーカル、 スポーツ万能、頭脳明晰…などといった類であろう。俺が言いたいのは、これらのワードから連想されうる限りで 『料理』の要素を含んだものは見当たらない、ということ。つまり、俺はこれまでハルヒに対して…少なくとも 『料理』という項目に関しては、特に明確なプラスイメージもマイナスイメージも抱いてはいなかった ということである。おわかりだろうか?先ほどのハルヒへの返答は、先入観無きゆえの事故なのだ。 「ふーん、無難なコメントをするのね。ま、それも仕方ないか。」 おお、妙に勘ぐられたりしないで助かった…って、仕方ないとはこれいかに? 「例えばこのお肉。これ安物なのよ。」 「そうなのか!?」 「焼き肉とかで使用する高級肉を使えばもっと味も出たんでしょうけどね。財布との相談で、ついカレー用の 薄いバラ肉買っちゃったのよ。ああ、でも決して邪見したりしないでよね!?質による差異こそあれどカレーに おいてはね、牛肉の場合ほとんどはカレー粉との整合性で味が決まったりするんだから!他にもナベに入れる スープだって…本来なら鶏のガラを煮込んだものじゃなきゃいけなかったのに時間との都合で…。でも 一般家庭とかでもね!時間に余裕がないときは代わりに水を使うってのはよくある手法なのよ!?だから」 「わ、わかった!!お前が精一杯頑張ってるってのは伝わったからもういいぞ! そりゃ金銭的・時間的な問題じゃ仕方ねえよ。それにだ、仮にもカレーをおごってもらってる身分の俺が お前に対して文句や贅沢を言うとでも…思ってんのか?んなわけねーだろ。感謝してるんだぜ…本当にな。」 「わかれば良し!」 …顔が少し赤くなってるように見えるのか気のせいか? まあ、いろいろ取り乱したからな。おおかた動揺でもしてるんだろう。 「それにしても滑稽ね…この細かく刻んである小さな物体は。」 いきなり話題変えやがったな…しかも、敢えて遠回しに言うことで俺に何かしらの揺さぶりをかけようとしてる。 「たまねぎ、みじん切りにして悪うございましたね。」 …こればかりはどうしようもねえ。どう見たって俺が悪い。 「それと、泣きながら切ってる誰かさんも滑稽だったかな。」 さすがにこれには反論させてもらおうか。これに関しては何一つ俺に落ち度はない! 相手がたまねぎである以上、この怪奇現象は生きとし生ける全ての者に訪れるものなのであるから。 調子に乗るのもそこまでにしてもらおうかハルヒさんよぉ…。 「そんなこと言っていいのか?ハルヒ。お前もこれを切りゃあ決して例外じゃねえんだぞ?」 「やっぱアホキョンね。そんな当たり前の反駁、聞き飽きたわ。」 …何…?? 「良いこと教えてあげる。たまねぎってのはね、周りの皮をむいたあと 冷蔵庫に10分くらい入れとけば… その後切ったって涙は出にくくなるのよ!その様子だと知らなかったみたいね~」 「何だと!?それは本当か??」 「本当よ。ま、疑うのならヒマなとき家で試してみることね。」 …またまた俺の敗北である。どうやらこいつのほうが俺より一枚上手らしい…って、ちょっと待て。 「ハルヒよぉ…そういうことはなぁ…」 …… 「たまねぎを切る前に言え!!」 「怒らない怒らない、過ぎちゃったことなんだし…もうどうでもいいじゃない。 『過ぎ去るは及ばざるがごとし。』って言うし!」 どうでもよくない!しかもそのコトワザの使い方違う!あ、いや…ハルヒのことだ、 おおかた敢えて誤用してみましたってとこだろう。まったくもって嫌味なやつだ… そんなバカ話をしながら、俺たちはカレーを平らげた。 …… 「それにしても、こういう辛い料理と合わさると麦茶のうま味も一気に引き立つな。」 「確かにそうね。…おかわりいる?」 「お、すまんな。頼む。」 2リットル型のペットボトルから静かに麦茶を注いでくれるハルヒ。その麦茶をすする俺。 …… そろそろ本題に入るか?いや、こういう事は向こうから話してくるのを待つべきなのかもしれないが。 しかし、相手に自分の弱みを見せようとしない…気丈で自尊心の高いハルヒが 安々と悩みを打ち明けてくれる…ようにも思えない。ここは俺から切り出すべきではなかろうか? 「ハルヒ、最近何か嫌なことでもあったか?」 「…え、い、いきなり何??」 揺さぶりをかける俺。 「お前が元気なさそうに見えたからな。ちょっと気になったんだ。」 「…あたしそんな顔してた?」 「ああ。」 「……」 …… 「あんたってさ…ボーっとしてるようで、実は結構鋭いとこがあるわよね。」 …ついに観念したのか、ハルヒは話し始めた。 「…朝方に両親が出てってからね…何か様子がおかしいの…。」 「……」 「最初はただの気のせいだと思ってたんだけどね…やっぱりするのよ…気配が。」 「…気配か。」 「家にはあたし一人しかいないはずなのに…何か音がするの。それも風の音とか暖房の音とかじゃなくて…。」 「…人的な音…か?」 「ええ…そうよ。聞き間違いだと思いたかったけど、確かに聞こえた。でも周りを見渡したって誰もいない…。」 「……」 「笑っちゃうよね、キョン。あたしがこんなこと言うなんてさ…少なくとも、おかしくはないはずなんだけど…。」 なるほど、ハルヒが俺に話をためらう理由がわかった。俺の考えていたような、単なるプライドだけの 問題じゃないらしい。話すことによって俺に【幻聴】や【被害妄想】などと断じられるのが怖かったのだ。 それもそうだろう…音がするのに周りには誰もいない。こういった不可解な症状を継続するようであれば、 たいていの常人はハルヒを【異常者】と決めてかかっても何らおかしくはない。 それをハルヒはわかっていた。だからこそ、俺にも話したくなかった。 「安心しろよハルヒ。お前がおかしいだけなら、俺もお前の仲間入りだぜ。」 「ど…どういうこと?」 「さっき外を歩いててな、俺も同様に何か気配を感じたんだよ。気配というか…人の足音みたいのをな。」 「キョンも!?」 「ああ。もちろん、そのせいでお前が極度の緊張状態に陥ってることもわかってた。 だから…くだらんジョークでも言って気休めさせてやろうと思ったんだがな、すっかり変態呼ばわりというわけだ。」 「…そうだったの。でもあたしは謝らないわよ!人の体を触ろうってのは、理由が何であれ言語道断なんだから!」 「おお、元気出たみたいだな。それでこそハルヒだ。」 「キョン…。」 …… 「その後、あたしは家の中にいるのが怖くなって外へ出ようと思った。遠くて…そして人通りの多い場所へ。」 「…まさかお前が夢タウンまで買い物しに行ったってのは…そのせいだったのか??」 「ええ…本音はね。建前は大安売りって言っちゃったけど。だからね… 家に帰ってきてあんたを見つけたときは正直ホッとした。」 …古泉と長門の話を聞かないでハルヒに会いに行ったのは、結果的には正解だったんだな。 「それからはあんたと行動を共にしたわけだけど…まさか外でも忌々しい気配を感じるとは思わなかった…。」 「スーパーから帰る途中だよな。」 「キョンはさ…あれ、一体何だと思う?人間?幽霊?」 「幽霊はないだろうよ。いつの時代のいかなる怪奇現象も元をたどれば 人為的、ないしは単なる自然現象であることが確定済みだからな。」 「…じゃあキョンはどっちだと思ってんの?」 「常識的にも考えてみろ、あんな自然現象あるわけねえだろうが。これはれっきとした人間の所業だ。」 「じゃあ何?ストーカーとでもいうの??…ワケわかんない!心当たりなんかないのに…」 ストーカー…まあ表現自体は間違ってねえかもしれねえな。 お前に神としての記憶を覚醒させようとする何者かの仕業なんだろうが。 …こればかりは俺一人では手に負えない。外に出て、古泉にでも電話して相談するとしよう。 「ハルヒ…ちょっとばかし外出してくる。」 「!?どうして?」 「いや…家の周りに不審人物がいないかどうか確かめてこようと思ってな。」 「な…!?もうあたりは暗いのよ?危険だわ!」 「安心しろよハルヒ。すぐ戻ってくるからさ。」 立ち上がり玄関のほうへ向かおうとしたら、急に後ろ方向へと引っ張られる。 …ハルヒにジャケットの裾をつかまれていた。 「…本当にすぐ戻ってくるんでしょうね?」 台詞こそ毅然としていた。…だが、その手が震えていたのはどういうことだ?これじゃまるで、 【一人にしないで】と言ってるようなもんじゃないか。その瞬間、胸が痛くなった。同時に、ある種の 苛立ちも覚えた。さっきこんな話をしたばかりだというのに、ハルヒ一人残して出て行こうとする、俺自身に。 「すぐ戻ってくるから心配すんな。」 「キョン…」 できれば俺だってハルヒと一緒にいたい。だが、事態を好転させるには今じっとしてるわけにはいかなかった。 後ろ髪を引かれる思いで、俺は外へととび出した。 …電話をかける前に、有言実行はしておかねばなるまい。 俺は庭や周辺を隈なく歩いてみた。…特に怪しいところはない…今のところは。 「もしもし、俺だ」 「おや、キョン君。無事涼宮さんとは会われましたか?」 「ああ…おかげ様でな。ところで話したいことがあるんだが…」 「僕でしたら、昼あなたとお会いした公園におります。どうせならそこで会話といきませんか? 昼のときと同様、長門さんもそこにいらっしゃいますので。」 目的地に着いた俺。ハルヒのとこから走って2分もかからない距離だ。 「夜分遅くご苦労様です。」 「……」 案の定古泉と長門がそこにいた。 「古泉…そして長門。まさかとは思うが…昼3時くらいに会ってから… 今(夜8時)の今まで、ずっとこの公園にいたんじゃあるまいな…!?」 「そのまさかですよ。ですよね、長門さん。」 「…そう。」 「…マジかよ。よくこんな寒い中5時間以上もいられたな。何かワケでもあるのか?」 「涼宮さんを守るため…と言っておきましょうか。この公園は彼女の家から非常に近いですからね。 何かあったときにもすぐ駆けつけられる距離にありますから。」 「…わかるようでわからないな。ここからハルヒ宅までは…400mくらいはあるぞ。 もっと良い場所があるんじゃないか?塀の近くとか。」 「それでは、通行人から不審者だと誤解されてしまう恐れがある。かえって無駄な事態を引き起こしかねない。」 「長門さんの言う通りです。逆に公園のような場所であるなら、留まっていたところで 別段不審に思われることは ありませんからね。ベンチに座って読書をしたり、弁当を食べたりしているのであれば尚更です。」 なるほど。確かに一理ある…。 「ということは、お前は弁当をここで食ってたわけだな。」 「さすがに飲まず食わずでずっといるわけにもいきませんからね…途中コンビニに出向いたりはしてましたよ。 そんなことより、何か我々に話したいことがあってここに来たのでは?」 「おう。じゃあ、二人とも聞いてくれ。」 …… 「それは恐ろしいですね…。これは僕なりの推理ですが、犯人は自身の存在を情報操作で 隠蔽したのではないでしょうか?実際はそこに存在していても、外部からは姿を確認することはできません。 長門さんのような力を有す人物ならば、いとも簡単でしょう。」 「情報操作?長門のような力?…じゃあ、ハルヒや俺をつけてた野郎の正体は宇宙人ってことか?」 「古泉一樹、その意見には反論させてもらう。」 珍しく異議を唱える長門。どうやら、彼女の犯人像は古泉とは異なるらしい。 「確かに古泉一樹の言う通り、その程度の情報操作ならば 我々情報統合思念体にとっては 造作もない。実行は可能。しかし、音が聞こえたというのであれば話は別。」 音…足音のことだな。 「なぜなら我々は環境情報の改ざんで、一般に有機生命体が移動時に伴うノイズ音をも 外界からシャットアウトできるから。外部に音が洩れるというのは、まずありえない。」 「…言われてみればその通りです。いやはや、長門さんには敵いませんね。」 宇宙人説は消えたか…。 「じゃあ長門、お前はこの件についてはどう思う?」 「…可能性として、ステルス迷彩を考えてみた。」 す、ステルス??って、アレか?光の屈折具合で姿が見えなくなるとかっていう… 「ステルス迷彩ですか。確かに、それを体にまとえば瞬時にして透明人間の出来上がりですね。 もっとも、現代の科学技術ではまだ実用化には至っていないようですが…。」 なるほど、それならばあの足音の説明もつく。だが、実用化されてないとなると…またしても行き詰まりか。 「確かに、この現代においては取得不可。しかし、未来技術をもってすればそれも可能。 今の科学技術の進展具合から推察するならば、そう遠くない未来ステルス機能は実用化の段階に入る。」 …… 「つまり、犯人は未来人。私はそう考える。」 …これほどまでに説得力のある説明をされて異議を唱えるヤツなど、もはやどこにもいないであろう。 長門らしい見事な推理…彼女の手にかかればわからんことなど無いと言っていい。 「長門、ハルヒを気絶させたやつと今回の犯人は…もしかして同一犯か?」 「確証はない。しかしその可能性は高い。」 やはりそうか…まあ誰が相手にせよ、常に警戒レベルはMAXでいるべきだろう。なんせ、電磁波やステルス等 といったとんでも技術を有す連中だ。油断して攻撃を喰らうような事態にでもなればシャレにならん。 「お前らのおかげで大体のところはわかったぜ…恩に切る。」 よし、これにて一件落着…というわけでもない。まだ用事が一つ残ってる。 「古泉、長門、話してくれ。昼に俺を呼びだした際、一体何をしゃべろうとしてたのかをな。」 「「……」」 なぜか無言のままの二人。 「ど、どうした??大丈夫か?」 「あ、いえ…すみません。つい言うのをためらってしまいました。」 ためらう…とは?そんなに言いづらい案件なのか? 「私も、そして古泉一樹も話すことに抵抗を感じているのは確か。」 「長門がそんなこと言うなんてよっぽどだな…でも、お前らは 昼呼び出して俺に話そうとしたじゃないか。何を今更躊躇してるんだ?」 「「……」」 二人は答えない。アレか、話の流れ的に言いにくいってことか?…今俺たちは何の話をしてた? 俺とハルヒをつけてた犯人のことだな。で、それは未来人の可能性が高いってことで話は終了した。 …… 「もしかして、未来に関係するようなことでも言おうとしてたのか?」 「…長門さん、そろそろ話しましょう。黙っていてもラチがあきませんし。 何を話すのか、薄々彼も気付いてるようです。」 「…了解した。」 嫌な予感がする。 「今から我々が話すことというのは」 …… 「朝比奈みくるのこと。」 まあ、そんな気はしてた。昼に長門と古泉に呼び出された際、朝比奈さんの姿だけ見当たらなかった時点で。 「朝比奈さんが…どうかしたのか?」 「今日の午前11時47分、朝比奈みくるがこの世界の時間平面上から消滅した。」 ……なん…だって? 「しょ、消滅って…どういうことだ?!朝比奈さんはどうなったんだ??」 「落ち着いてください!彼女は無事です!」 「午後1時24分、彼女は再びこの時間平面上へと姿を現した。」 「…つまり、今朝比奈さんは普段通りにこの町にいるってことか?会おうと思えば会えるってことか?」 「そういうことです。」 「よかった…。」 俺は安堵の表情を浮かべる。 「って…そりゃまたどういうことだ?つまり朝比奈さんは11時何分かに時間跳躍でもしたってことか?」 「そう。行き先はもともと彼女がいた世界…未来だということは判明している。」 「…なら、特に驚くようなことでもないんじゃないか? 上からの急な指令で未来へ帰ったりとか、大方そんなとこだろ?」 「平時であるなら我々もそう考えます…しかし、今は違います。非常時です。 一か月もしない内に世界が滅ぼされる…この事態を非常時と言わずして何と言います。」 「そりゃ、確かに非常時なんだろうが…だからどうしたってんだ?」 「今のこの世界が滅べば…当然ですが未来も消滅します。 そしてその影響は少なからず未来へも…すでに出始めているはずです。」 「そして今この世界は滅ぶか否かの…いわば分岐点にたたされている。それは、同時に 未来が滅ぶか否かの分岐点とも置き換えることができる。その瀬戸際の時間軸に位置する未来人を 未来へと帰還させるというのはよほどの理由があってのことだ、と私は考える。」 「…お前らの理屈で言えば、つまり朝比奈さんはこの世界、そして未来を救うべく奔走してるってわけだろ? なら、それでいいじゃねえか!なぜ話すのをためらったりしたのか、俺にはわからんな。」 「確かに、ここまでの会話を聞いただけではそう思うのも当然でしょうね。ここからが話の核心なわけですが… では、そんな重大性を秘める時間移動を…彼女はどうして我々に話してはくれなかったのでしょうか??」 …… 「彼女がここの時間軸に戻ってきたのは午後1時24分。その時刻から 今(午後8時35分)まで…伝えようと思えば私たちにはいつでも伝えられたはず。」 「…禁則事項とやらで話ができなかっただけじゃないのか?」 「この世界は危機に瀕してるのですよ。我々だって…最悪の場合死ぬかもしれない。 そんな時期に際してまでも、彼女は我々より【禁則事項】とやらを優先しようとするわけですか?」 「…古泉よ、それ以上朝比奈さんのこと悪く言ったら承知しねえぞ。 あの人が俺たちのことどうでもいいとか、そんなこと思ってるわけねーだろが!」 「……」 「…古泉一樹を責めないであげて。彼は彼なりに頑張っている。 彼と機関の立場を…朝比奈みくるのそれと当てはめて冷静に考えてみるべき。」 長門… 朝比奈さんは俺たちの仲間であると同時に未来人でもある。 未来からの指令は絶対…禁則事項がそれを物語ってる。 古泉は…同じく俺たちの仲間であるとともに機関に属する超能力者でもある。 機関からの命令は絶対… 絶対…? 俺は以前古泉から聞かされた言葉を思い出していた。 『もしSOS団と機関とで意見が分かれてしまった際には… 僕は、一度だけ機関を裏切ってあなた方の味方をします。』 …古泉の俺たちへの仲間意識は相当なもんだったじゃないか。 だからこそ、古泉は朝比奈さんに対して苛立ちを覚えてしまったのか? 仲間よりも未来を優先する素振りを見せてしまった…彼女を。 「すまん古泉…お前の気も知らないで。」 「…いえ、いいんです。僕こそつい熱くなって… 仮にも仲間を悪く言うようなことを言ってしまい、申し訳ないです。」 「…私自身も朝比奈みくるのことは決して悪く思いたくはない。 しかし、まだあなたに伝えねばならないことがある。」 話すのをためらってた理由は…まだありそうだな。 「言ってくれ長門。覚悟はできてる」 「…朝比奈みくるがここの時間軸に戻ってきた午後1時24分以降、 これまでに6回…ある未来人との電話での接触を確認している。」 「ある未来人?一体誰だ…?」 気のせいか動悸が速まる俺。 …… 「パーソナルネームで言うところの、藤原。」 …え?
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「おかえりなさいませ、ご主人様」 夕焼けで学校が赤く染まる頃、学校にようやくたどり着いた俺を待っていたのは、変態野郎からの気色悪い発言だった。 あまりの不気味さに、俺はその言葉を発した古泉に銃を向けたぐらいだ。 古泉は困った顔を浮かべて両手をあげて、 「失礼しました。いろいろつらい目にあったようですから、癒しを提供して差し上げようかと思っただけです」 「癒されるどころか、殺意が生まれたぞ」 俺はあきれた口調で、銃をおろす。まあ、本気で撃つつもりもなかったけどな。どうせなら朝比奈さんを連れて……う。 あの後、俺たちは北山公園を南下して無人の光陽園学院に入ったが、敵に動きが悟られないように、 そのまま数時間そこで待機していた。もちろんハルヒには連絡を入れておいたが。 俺はしばらく学校内を見回していたが、古泉が勝手に解説を始める。 「北高の方はほとんど無傷ですね。敵歩兵の襲撃もありません。涼宮さんに作戦失敗を印象づけるには、 北山公園に僕らが入ったのと同時に学校を襲うのがもっとも効果的だと思いますが、 どうして敵はその手を使わなかったんでしょうか。僕が相手の立場なら必ずそのようにしますがね。 ま、大体察しはつきますが」 「しらねえし、今はそんなことを考える気分でもないな」 古泉を無視しつつ、俺は学校内を歩き回る。どこにいるんだ? ふと、俺の目に学校の隅に並べられている黒い物体が目に入った。見るのもいやになるその形状は、 明らかに死体袋だった。あの中に谷口も入れられているのだろうか。 「死者52名、負傷者13名。これが北山公園攻略作戦で出て犠牲です。 死者よりも負傷者が少ないという事態が、今の我々の力のなさの現われかもしれません」 やや声のトーンを起こした古泉が言う。俺の小隊も合計16人の命が失われた。 鶴屋さん小隊なんて生き残った方が少ないし、ハルヒや古泉の小隊の損害もかなりあるはずだ。 と、そこでスマイル野郎が重苦しくなった空気を変えるようにわざとらしくぽんと手を叩き、 「ああ、なるほど。涼宮さんを探しているのですね。それなら、前線基地に詰めていますから、学校にはいませんよ」 「なんだと?」 古泉に向けた俺の表情は、鏡がないんだから確認しようがないんだが、どうやら抗議めいたものだったらしい。 めずらしくあわてたように、 「いえいえ、僕はきちんと止めましたよ。いつもとは違い、かなり食い下がったつもりです。 涼宮さんと言い争い一歩手前までいくなんて初めてでしたからね。閉鎖空間が発生しないかヒヤヒヤものでした。 しかし、どうやってもあそこにいると言い張りまして。ああなったら、てこでも動かないことは あなたもよくご存じでしょう?」 しかし、何でまた前線基地にいるんだ? 敵の襲撃が予想されるのはわかるが、 総大将がいる必要もないだろうに。 「何となく予想がつきますけどね」 古泉はくくと苦笑し、 「涼宮さんはあなたの帰還を学校でただ待っているなんてしたくなかったんですよ。 ぼーっとしているといろいろ悪いことを考えたりしますからね。何かして気を紛らわせたかったんでしょう。 あとは……」 古泉がちらりと背後を見る。そこには朝比奈さんが相変わらずのナース姿でこちらに走ってきていた。 「鶴屋さんのことを直接言いたくなかったんではないでしょうか。これはあくまでも僕の推測ですけどね」 「キョンく~ん!」 息を切らせて走ってくる朝比奈さんに、俺は激しく逃げ出したい衝動に駆られた。こんな気分は初めてだ。 「よかった……無事だったんですね……!」 感激の涙を浮かべる朝比奈さんに、俺の心臓はきりきりと痛んでしまった。この後、確実に聞かれるんだ。 鶴屋さんのことについて。 「本当に心配したんですよぉ……。学校からはなにも見えなくて、どうなっているのか全然わかりませんでしたから」 「ええ、いろいろありましたが、無事に帰って来れてなによりです」 「あ、あと、鶴屋さんは?」 この言葉とともに、俺は心臓がつかみ出されたのではないかと言うぐらいの痛みが全身に走った。 だが、次に朝比奈さんが言った言葉は予想外のものだった。 「古泉くんから聞いたんですけど、鶴屋さん、足を怪我してどこかの民家に隠れているんですよね? あたしもう心配で心配で……」 俺ははっと古泉の方を振り返ると、ウインクで返してきた。この野郎、しっかりと朝比奈さんに事前に告げておいたのか。 変なところで気が利きやがる。でも助かった。そして、つらいことをいわせちまってすまねえ。 「鶴屋さんは無事ですよ。いつものまま元気です。ただ、ちょっと動くには厳しそうなんで、 ばかげたドンパチが収まるまで隠れていた方が良いと思います。幸い、隠れ家には食料もあるらしく、 3日間隠れるには十分だそうですよ」 「無線とかではなせないんですか? あたし、鶴屋さんの声が聞きたくて」 俺はぐっとうなりそうになったが、ぎりぎりで飲み込む。 「えーあー、無線ですか、あー無線なんですけど、なにぶん学校から離れたところにいる関係で、 あまり連絡できないんですよ。敵に――そう敵に傍受されて発信源を突き止められたらまずいですからね」 「そうなんですか……」 がっくりと肩を落とす朝比奈さん。すみません、本当にすみません……! でも、朝比奈さんはそんな俺の大嘘を信じてくれたのか、 「仕方がないですね。みんな大変なんですから、あたしばっかりわがままは言えませんし」 「3日経てば、また会えますよ。それまでがんばりましょう」 何とか乗り切れたか。こんな嘘は二度とつきたくねえ。 と、朝比奈さんはいつものかわいい癒しの笑顔を浮かべて、 「あ、そういえば、皆さんご飯まだなんじゃないですか? 長門さんがカレーを作ってくれたんです。 ぜひ食べに来てください」 神経が張りつめたままだったせいか気がつかなかった。学校中を覆うカレーのにおいに。 ◇◇◇◇ 「食べて」 食糧配給所になっていた教室で待ちかまえていたのは、迷彩服の上に割烹着を着込んだ長門だった。 これだけ見ると、あの正確無比な砲撃の指揮官とは思えない。ちなみに朝比奈さんは作業があると言って、 またぱたぱたとどこかへ行ってしまった。 「すまん、もらうぞ」 「いただきましょう」 俺は紙製の皿にのったカレーを受け取ると、がつがつとむさぼるように食いついた。 よくよく考えれば、15時間近くなにも食べていない。戦闘中は携帯していた水筒の水ぐらいしか口にできなかったからな。 「おいしいですよ、長門さん」 こんな時まで格好つけたように、優雅にカレーを食する古泉。全くどこまで行っても余裕な奴だぜ。 しかし、長門は大丈夫なのか? 相当疲労もたまっているはずだろ。 「問題ない。身体・精神ともに異常は発生していない」 そうか。それならいいんだが、あまり無理はするなよ。 「今のわたしにできるのはこのくらい。できることをやる。それだけ」 「でも、あきらめるのが少し早すぎるのではありませんか?」 背後から聞こえた最後の台詞は俺でもないし、古泉でもない。どこかで聞き覚えがあるようなと思って振り返ると、 「なぜ、ここにいる」 長門の声。トーンはいつもと変わらないが、内面からにじみ出ている感情は【驚】だとはっきりと見えた。 声の正体はあの喜緑さんだったからだ。生徒会の人間であり、また長門と同じく宇宙的超パワーによって作られた 対有機生命体インターフェース……で良かったんだよな? 北高のセーラー服を纏っているが、 やたらとそれが懐かしく見えるぜ。 「私の空間・存在把握能力で確認した限り、ここには存在していなかったはず」 「この固定空間での時間座標で10分ほど前にこちらに来ました」 ひょうひょうと喜緑さん。ちょっと待て、最初はいなくてさっき来たと言うことは…… 長門はカレーをすくってお玉から手を離し、喜緑さんの元に駆け寄る。 「この空間に干渉する方法を有していると判断した。すぐに提供してほしい」 「残念ながら、それは無理です」 「なぜ」 「外側から必死にアクセスを試みて、本当にミクロなレベルのバグを発見することができました。 ここにはそれを利用して侵入しましたが、現在は改修されています。同じ手で、ここから出ることはできません。 思った以上にこの世界を構築した者は動きが速いです」 喜緑さんの言葉に長門はがっくりと肩を落として――いや、実際には1ミリすら肩を動かしてもいないんだが、 俺にはそう感じた。 「不用意。打開のための機会を逃したのだから」 「すみません。外側から一体どんな世界になっていたのかわからなかったんです。 まさか、こんな得体の知れないものが構築されているとは思いもよりませんでした」 めずらしく非難めいたことを言う長門を、あの生徒会室で見せていたにこにこ顔で受け流す。 「しかし、一つの問題からこの世界に介入することが可能だったのは紛れもない事実です。 なら、まだ別の方法が残されていると思いませんか?」 「…………」 喜緑さんの反論じみた台詞に、長門はただ黙るだけだ。 どのくらいたっただろうか。俺のカレー皿が空になったが、空腹感が埋まるにはほど遠くおかわりがほしいものの、 なんだか気まずい雰囲気の中でそれもできずにどうしたものかと思案し始めたくらいで、 「わかった」 そう返事?を長門はした。さらに続ける。 「協力を要請する。この空間に関しての情報収集及び正常化を行いたいと考えている。 ただし、私一人では効率的とは言えない。状況は悪化の一途をたどっているため短時間で完了する必要がある」 「もちろんです。そのためにここに来たのですから。お互い、意志は別のところにありますが、 現在なすべき目的は一致しています。問題はありません」 なにやら交渉がまとまったらしい。二人は食糧配給所の教室から出て行こうとする。 おいおい、こっちの仕事はどうするんだ? 「するべきことができた。そちらを優先する。現在の仕事は別の人間に変わってもらう。問題ない」 「砲撃の指揮はどうするんだ?」 「そちらは続行する。今持っている情報を精査した中では、私がもっとも的確にそれが行えると判断しているから」 長門の言葉にほっと俺は胸をなで下ろす。あの正確無比な援護射撃がなくなったら、 正直この先やっていく自信もない。しかし、一方でこの非常識世界をぶっ壊してくれるならそうしてほしいとも思うが。 「どちらも行う。状況に応じて切り替えるつもり。その時に最も有効な手段をとる。どちらにしても」 長門は俺の方に振り返り、 「私はあなたを守る」 ◇◇◇◇ さて、なにやら長門が頼もしい事を言ってくれたし、 少しながらこのばかげた戦争状態から脱出できる希望が見えてきたわけだが、 どのみちもうしばらくは俺自身もがんばらなければならないことは確実だ。 そのためにはいろいろとやるべきこともあるだろうが、 「台車でカレーを運搬するのを護衛するのは何か違うんじゃないか?」 「いいじゃないですか。腹が減っては戦はできぬというでしょう。これも生き延びるためです」 俺の誰に言ったわけでもない愚痴を、古泉がいつものスマイル顔で勝手に返信してきた。 今俺たちは、学校から前線基地へ移動中だ。別に散歩しているわけではなく、 2台の台車に乗せたカレー満載な鍋とご飯の詰まった箱を載せて、それを護衛している。 まあ、ストレートに言うとハルヒたちに夕飯を届けている最中というわけだ。 しかし、武装した10人で護衛して運搬するカレーとは一体どれだけの価値があるんだ。 「美味しかったじゃないですか、長門さんのカレー。犠牲までは必要ありませんが、厳重・確実に 涼宮さんたちに届ける価値は十分にあると思いますよ」 「それに関しては別に否定しねえよ」 実際にうまかったしな。腹が減っているからという理由だけではないほどに美味だったぞ。 護衛を担当しているのは、俺と古泉、他北高生徒10名だ。とは言っても、俺と古泉の小隊の生徒はいない。 さすがに疲労の色も濃かったので、今の内に休ませている。国木田もだ。今ここにいるのは、 その辺りをほっつき歩いていた生徒をかき集めて編成している。だんだん気がついてきたが、 生徒一人一人の戦闘における能力は全く同じだ。身体能力も銃の扱いも。そのため、生徒を入れ替えても 大した違和感を感じない。 そんな中、俺と古泉はカレー護衛隊の一番後ろを務めていた。古泉がこの位置を勧めていたのだが、 どうせ何か話したいことがあるんだろ。 「せっかくですし、お話ししたいことがあるんですが」 「……俺にとって有益なら聞いてやる」 「有益ですよ。それも命に関わる話です。ただし、内容はいささか不愉快なものになるかもしれませんが」 気分を害するような話は有益とは言えないんじゃないか? まあ、そんなことはどうでもいいが。 古泉は俺が黙っているのを勝手にOKと解釈したのか、いつもの解説口調で語り始める。 「まず、率直にお伺いしますが、あなたが生き残って鶴屋さんが亡くなった。この違いはなぜ起こったと思いますか?」 「俺は腰を抜かしてとっとと逃げ帰った。鶴屋さんは勇敢に戦い続けた。それだけだろ」 「言葉としては同じですが、意味合いは違うと思いますね」 どういう意味だ。もったいぶらないでくれ。 「敵は最初からあなたと鶴屋さんが植物園まで撤退することを阻止しようとしていなかったんですよ。 だから、あなたは犠牲者は多数でましたが、意外とあっさり戻れています。 これは、敵の目的は涼宮さんに自らの決定した作戦でぼろぼろに逃げ帰ってくる生徒たちの姿を 見せつけようとしていたのではないでしょうか」 「おい待て、それだと鶴屋さんもとっとと逃げれば死ななかったって言う気かよ?」 「率直に言ってしまえば、その通りです」 なんだかむかっ腹が立ってきたぞ。おまえは鶴屋さんの命をかけてやったことを非難するつもりなのか? どうやら俺の内心ボイスが表情に浮かんできていたのか、古泉はあわてて、 「いえ、別に鶴屋さんの判断が間違いだったとは言っていません。逆に、敵から主導権を奪い去ったという点では、 これ以上ないほどの英断だったと思いますね。おかげで敵は一部の作戦を変更する必要までできた」 「公園南部を散らばった鶴屋さん小隊を追いかけ回す必要ができて、さらにロケット弾発射地点を守る必要ができた。 そのくらいなら俺にだってわかる」 「それだけではありません。敵は鶴屋さんを仕留める必要に迫られたんです。 必死にあなたたちを鶴屋さんと合流させなかったのはそれが理由だと考えていますね」 「何だと?」 「敵は涼宮さんに逆らう――そこまで行かなくても反抗する人物なんていないと踏んでいたのでしょう。 見たところ、ある程度は涼宮さんとその周辺の人物の下調べも行っているようですし。 ところが真っ先に鶴屋さんは涼宮さんの指示を拒否して、自らの意志で行動した。 これはこの状況を仕組んだ者にとって脅威であると映るはずです。明らかに予定外の人物ですからね。 だから、あの場で確実に抹殺する必要に迫られた。今後の予定に影響を及ぼさないためにも」 古泉の野郎の言うとおりだ。なんだかだんだん不愉快になってきた。有益な情報はまだか? 「今、これを仕組んだ者はこう考えているでしょう。何とか鶴屋さんは抹殺できた。 ところがどっこい、今度は別の人間が涼宮さんに反抗――それどころかある程度コントロールした。 ならば、次の標的は当然あなたですよ」 古泉の冷静な言葉に俺はぞっとする。突然、周辺の見る目が変わり、その辺りの物陰に敵が潜んでいて、 今にも俺を狙撃しようとしているんじゃないのかという不安が頭の中に埋まり始めた。 「ご安心ください。そんなにあっさりとあなたを仕留めるつもりはないと思いますよ。 なぜなら、あなたは涼宮さんにもっとも影響を与える人物です。敵も扱いは慎重になるでしょう。 下手に傷つけて一気に世界を再構築されたら、元も子もありませんからね」 古泉は俺に向けてウインクしてきやがった。気色悪い。 まあ、しかし、確かに有益な情報だったよ。敵が俺を第一目標としながら、早々に手を出せない状態らしいからな。 うまく利用できるかもしれん。珍しくグッドジョブだ古泉。 「僕はいつもそれなりに良い仕事をしているつもりですよ」 古泉の抗議じみた声を聞いた辺りで、ようやく前線基地の到着した。 ◇◇◇◇ なにやら前線基地ではあわただしいことをやってきた。窓を取り外したり、どこからか持ってきた鉄板を廊下などに 貼り付けている。ハルヒはここを要塞にでもするつもりか? そんな中、ハルヒはトランジスターメガホン片手に指示をとばしまくっていたが、 「くぉらあ! キョン!」 俺の姿を見たとたんに、飛び出してきた。やれやれ、どうしてこいつはこう元気なんだろうね。だが―― 「あんたね! 帰ったなら帰ったと一番にあたしに報告しなさいよ! いい? あたしは総大将にして総指揮官なの! 常に部下の状況を把握しておく必要があるってわけ! 今度報告を怠ったら懲罰房行きだからね!」 怒っているのに、顔は微妙に笑顔というハルヒらしさ満点だ、と普通の人なら思うだろ。 でもな、付き合いが長くなってくると微妙な違いに気づいちまったりするんだ、これが。 ハルヒは運んできた台車上のカレー鍋をのぞきこみ、 「なになに? カレー? すっごいじゃん、誰が作ったの?」 「長門だそうだ」 「へー、有希が作ってくれたんだ。じゃあ、みんなで遠慮なく食べましょう」 ハルヒは前線基地の建物に戻ると、 『はーい! よっく聞きなさい! 何とSOS団――じゃなくて、副指揮官である有希からカレーの差し入れよ! いったん作業を止めて休憩にしなさい!』 威勢の良い声が飛ぶと、腹を空かした生徒たちがぞろぞろとカレー鍋に集まり始めた。 ただ、その中にハルヒはいない。 「では、僕はいったん学校に戻りますね。あとはお願いします」 そう古泉は何か言いたげな表情だけを俺に投げつけて戻っていった。言いたいことがあるならはっきりと言えよ。 俺は前線基地とされている建物の中に入り、 「おいハルヒ。せっかくの差し入れなのに食わないのか?」 そう玄関口に寝っ転がっているハルヒに声をかける。 「あたしは最後で良いわ。あんなにいっぱいあるんだし、残ったのを独り占めするから。 その方がたくさん食べられそうだしね」 「そうかい」 俺はヘルメットを取り、ハルヒの横に座る。 じりじりと日が傾き、もう薄暗くなり始めていた。がやがやとカレー鍋に集まる生徒たちの声が建物内に響いているのに、 「静かだな……」 「そうね……」 俺とハルヒは共通の感想を持った。 「あんなにいた敵はどこに行っちゃったのかしら。てっきりすぐにまた攻撃して来ると思ったのにさ。 ちょっとひょうしぬけしちゃったわ」 「来ないに越したことはないだろ。まあ、そんなに甘くはないだろうけどな」 ――またしばらく沈黙―― 「大体、何で連絡くれなかったのよ。いろいろ考えちゃったじゃない」 「何だ、心配してくれたのか?」 「あったりまえでしょ! 部下の身を案じるのは上官なら当然よ、トーゼン!」 ――ここでまた会話がとぎれる。そして、もう日がほとんど降りてお互いの表情も見えなくなった頃―― 「ねえ……キョン……あ、あのさ……」 「なんだ?」 「その……」 「はっきり言えよ。どもるなんて珍しいな」 ――それからまた数分の沈黙。俺はただハルヒが話を再開するのを待ち続け―― 「その……鶴屋さんなんだけどさ。なんか……言ってなかった?」 「何かって何だよ?」 「……恨み言とか」 俺はハルヒに気づかれないように、視線だけ向けてみる。しかし、もう辺りは薄暗く、その表情は読み取れなかった。 「そんなこと言ってねえよ。また学校で会おうだってさ。いつもと同じだった――最期まで」 「そう……」 ハルヒが俺の言葉を信じたのか信じていないのかはわからなかった。ただ、明らかに落ち込んでいるのはわかった。 いつものダウナーな雰囲気どころではない。完膚無きまで叩きのめされているような感じだ。あのハルヒが。 それを認識したとたん、激怒な感情がわき上がる。額に手を当てて必死に我慢しないと、すぐに爆発しそうなほどだ。 あのハルヒをこんなになるまでめちゃくちゃにしやがった。絶対に許さねえ……! ~~その5へ~~
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…… 「…ここはどこだ?」 気がつくと、俺は真っ暗な空間へと浮かんでいた。 目の前には地球が広がっている…隣には月らしきものも見える。 「ここは…宇宙?」 あまりに広大すぎる暗黒の大空間に、 青く澄みきった水の惑星を目の当たりに 俺はただ呆然と立ち尽くすだけだった。 ! 「地球が燃えている…」 青かった地球がいつのまにか赤く変色していた。 「一体何がどうなってんだよこりゃ…」 自分の置かれている状態もそうだが、全く状況がつかめない。 !? 「今度は透明に…?」 次の瞬間には地球は水色に近い透き通った色へと化していた。まるで氷で覆われたかのごとく…。 …… 「…また青に戻ったか。」 再び地球は青色へと戻った。しかし、どうやら何か様子がおかしい。 「陸地が…ない…?」 地球全体が真っ青な球体へと化していた。緑や茶色といった陸地が ことごとく消滅してしまっているのが見てとれる。陸が海に呑まれてしまったとでもいうのだろうか。 …… 今度はどこからか泣き声が聞こえてくる… 「この声どこかで…」 どこか聞いた覚えのある声。 「まさか…ハルヒか!?」 そう叫ぶと、いつのまにか声は聞こえなくなっていた。 「…え?」 ふと地球のほうに目をやって俺は驚愕した。なんと、先程まで見えていた地球が消滅してしまっている… いや、消滅というのは言い方が悪い。正しくは【見えなくなっている】と言うべきだろう。物を見るためには 言うまでもなく光が必要であるが、その光が四方を見渡しても見当たらないのだ… 光源体である太陽は一体…どこへ行ってしまったというんだ?? 再び声が聞こえる。 「…や…い…あた…したく…な…」 その声は、しだいに大きなものへとなっていく。 「いや…い…あた…こ…な…くない…」 …… 「嫌…っ!嫌!!あたしは…こんなことしたくない…!!!!」 !? ッ!! …… …デジャヴ いつもと同じ見慣れた俺の部屋。窓から朝日が射していることから、 おそらく今は朝なのであろう。昨日のように時計を確認するまでもない。 いや… 一応確認しておくか。 時刻は7 38 ほら見ろ、やはり朝じゃないか!と得意げに語っている場合でもない。一歩間違えりゃ遅刻じゃねーか畜生。 急いでかばんに教科書やノートをつめる俺。にしても自らの不覚さを嘆かずにはいられない。 なぜ俺は【目覚ましセット】という当たり前にして当然のごとく行為を、昨夜忘れてしまったというのか? それほどまでに、俺は昨日疲れてたってのか? 準備を終えた俺は廊下で妹と軽く挨拶を済ませた後、 食卓に並んだトーストを口に頬張り、潔く玄関を飛び出した。 …… 「はあ…はあ…まったく、いい運動だぜ…。」 今俺がいる位置は、学校に隣接するあの忌々しい長い長い坂のちょうど真下である。つまり、 俺はここまで全速力で走ってきた…というわけだ。携帯で時刻を確認、とりあえず遅刻は免れたようである…。 時間的余裕もあるので歩くとする。この坂を走らねばならないとなった日には自殺ものであろう。 それが防げたというだけでも、俺は今日も力強く生きられるというものである。 …ようやく落ち着いたところで、俺は昨晩の事象を振り返ることができた。 「まさか二日続けておかしな夢を見るとは…。」 その一言に尽きる。支離滅裂かつ荒唐無稽な夢など一体誰が進んで見ようなどと思うのか… まあ夢など言ってしまえば、全てそういうもんなのかもしれないが。とにもかくも、 まず話をまとめることから始めるとするか…と思ったのだが、そもそも抽象的すぎて 何をどうすればいいのかもわからん。とりあえず…特徴らしきものだけでも挙げていってみるとしよう。 ・地球の崩壊 ・謎の声 …明確に挙げられるのはこの二つくらいか。なぜ俺があのとき宇宙にいたのかは知らんが… (単に視点が宇宙だったってだけかもしれんが)地球が燃えたり氷ったりするのを、確かにこの目で見た。 ならば崩壊という表現は別に差し支えないだろう。そして極めつけは、夢が覚める直前に聞こえてきたあの声… 「あの声は…ハルヒだったのか?」 もしそうなのだとしたら、一昨日みた夢との関連性が見えてくる。一昨日の夢では地震やその他怪奇現象で 町が壊滅。昨日は地球が…規模こそ全く違うが、同じ【崩壊】というワードでくくることができる。そして… 思い出したくはないが、地震により家族が息を引き取った際、放心状態に陥っていた俺の脳内に響いてきた… ハルヒの声。あのときハルヒは『助けて!』言っていた。昨日の例の声は…確か『こんなことしたくない!』 とかいう内容だったかな。両者に共通することは、俺に向かって何らかのSOSを発信していたということである。 俺は常識人だ。ゆえに町や、ましてや地球荒廃などといった異常にさらに異常をかけたような とんでも事態が発生するなどとは…微塵も思っていない。ただ、あれらがハルヒの無意識の内に 発動した…俺に対する干渉なのだとしたら?一連の超常現象はあくまで比喩であり、夢の本質自体が 実は、ハルヒが俺に救助信号を発信するだけのただの手段でしかなかった可能性が浮上してくる。 つまり、ハルヒは今現在とてつもない悩みを抱えている…その可能性が非常に高いということである。 その悩みが何なのかは俺には見当もつかないが。というのも、最近のハルヒに変わった様子など 特に見受けられないからだ。万一それに俺が気付かなかったとして、長門や古泉がそれを見逃すとは 考えにくい。だから、なおさらである。 …… とまぁ、ここまでカッコよく主張してみたはいいものの… 一連の夢がハルヒの能力とは無関係の、本当の意味でのただの【夢】だったのだとしたら、 ここまで深く熟考している俺など、傍から見れば滑稽以外の何者でもないだろう。 そうである場合、谷口にすら嘲笑される自信がある。それでもだ、俺自身こんなネガティブな展開など 望んじゃいない。ハルヒが何か多大な悩みを抱えて苦しんでる姿なんて、想像したくもないからな。 「あら、キョンおっはよー。予鈴ギリギリね。」 教室に着き、俺はいつもと同じく後部座席にて座っておられる団長様に声をかけられた。 「そうみたいだな。遅刻を免れて助かったぜ。」 どうするか…朝っぱらからいきなりハルヒにこんなこと質問すんのもアレかもしれんが、 一応言っておこう。杞憂であれば、それに越したことはないんだからな。 「なあハルヒ。」 「ん?何?」 「お前さ、今何か悩んでることとかあったりするか?」 「…は?」 「言葉通りの意味だ。」 しばらく沈黙が続いた後、その均衡を破ったのはハルヒだった。 「…ぷっ、あっはっはっは!キョン、朝からどうしたの?何か悪い物でも食べた?あはははっ!」 どうやら、団長様は真面目に答える気などさらさらない様子である。 「んー悩みねーまあ、ないこともないわよっ!!」 おや?一応答えてくれるみたいである。しかし万遍無く浮かべている笑みから察すると、 やはり真面目には答えてくれないらしい。しかも、展開が大体予想できた。 「悩みの種はね…あんたよあんた!テストは赤点スレスレだし今日は遅刻しそうになるわで、 ヒヤヒヤもんもいいとこよ!あんたはもう少しSOS団の団員なんだっていう自覚を持ちなさい! 団長に泥を塗るマネなんて許さないんだからね!」 楽しそうに俺を断罪するハルヒさん。うむ、やはり予想通りだった。相変わらず、俺に言い放題なのであった。 「まあそれは半分冗談としてさ、朝からそんなこと聞くなんて一体どうしたのよ?」 さて…どうしようか。変にはぐらかすと直感が鋭いハルヒのことだ、 ややこしいことになる可能性大。ゆえに、ここは素直に答えておくとしよう。 「いや、お前が俺に助けを求めてる夢を最近見ちまってな。ちょっと気がかりになって聞いてみたってところだぜ。」 「…何それ、気持ち悪い夢ね…。」 同意しておこう。現実的に考えて、お前が俺に助けを求めるなんてことまずありえんからな。 「もしかしてあんた、あたしに従順にさせたいって欲望でもあるんじゃないでしょうね??」 気持ち悪いって、そっちのほうかよ! 「助けを請うってのはつまりその裏返しだし、夢ってのは密かに思ってるようなことが 反映されたりするもんだし…あたしに何か変なことでも考えてたら承知しないわよ!?」 いやいや、そりゃ考えが飛躍しすぎだろう…ってか願望が夢で具現化なんて、一昨日、昨日の 夢見りゃ絶対ありえんことを、俺は知っている。何が楽しくて家族が死ぬことや地球の滅亡を 望まにゃならんのか…まあ、さすがにこういう夢の内容までハルヒに話そうとは思わないけどな。 …そんなこんなで時は昼休み。俺は谷口&国木田と席を囲って弁当を食っていた。 ハルヒは相変わらず学食のようだ。 「ところで国木田、昨日休んでいたようだが体のほうは大丈夫か?」 「ん?ああ、おかげ様で。」 「さてはお前、勉強のしすぎで熱でも起こしたか?」 谷口が横から言葉をはさむ。 「だったらまだよかったんだけどね…単なる風邪だよ、ほら、もうすぐ12月だってこともあって 冷えてきたじゃない?そのせいかな。二人は風邪ひかないよう気をつけてね。」 「おーおー、まあそのへんは大丈夫だぜ。特にキョンはな。バカは風邪ひかないって言うだろ?ははは!」 谷口よ、どの口がそれを言うんだ…確かに俺は成績も下の中くらいでバカかもしれない。 が、お前はお前で俺より成績悪かった記憶があるんだがなぁ…気のせいか? 「それを言うなら谷口もバカだから風邪ひくことないね。いや~二人とも羨ましいよ。」 おお、俺が言わんとしていたことを代わりに国木田が言ってのけてやったぞ。 が、しかし、最後の一言は残念だ国木田…お前も俺のことバカだと思ってたんだな…。 「でもよ~そうそう例年通り寒くなるわけでもないみたいだぜ? 今朝の天気予報見てたら、来週の中頃は夏みたいな気温になるとかなんとか。」 「…谷口が天気予報を見るなんて珍しいな。」 「うるせーよキョン、俺だってそんくらい見るぜ。」 「どうせ朝食ついでに適当にTVのリモコンいらってたら偶然映ったってところなんでしょ?」 「国木田…お前鋭いな…。」 鋭いも何も、普段のお前の性格や言動を考えりゃ当然の帰結だとは思うがな。 しかし、夏みたいな気温か…そういや夢の中でも確かあのとき暑かった記憶が… …… 「キョン、大丈夫?顔真っ青だけど。」 「おいおい、バカは風邪ひかないって言った手前にこれかよ。」 気付かないうちに、俺は随分と陰鬱そうな顔になってたらしい。 「あー、いや、何でもないぜ。ちょっと寒気がしただけだ。」 「まさか風邪にでもかかったのかよ?」 「じゃあもうバカは谷口一人になっちゃったね。」 「国木田てめーッ!!」 お前らのコントを眺めてたら、あの悪夢が少しでも薄れたぜ。感謝するぞ谷口、国木田。 あんな未来…俺は絶対信じねーぞ…。 操行している間に放課後。またいつものごとく部室へと向かう俺。 「お、長門、お前だけか。」 「そう。」 俺が定着席に座ると、何かのCD-ROMをもってこっちにやってくる長門。 「これがSinger Song Writer…軽音楽部から借りてきた作曲用ソフト。 パソコンにインストールすれば即行使える。そして、これが説明書。」 「ん?ああ、これが昨日古泉が言ってたやつか!サンキュー、長門!」 早速パソコンを立ち上げてインストールする俺。 …部室に、団員それぞれにパソコンが宛てがわれていることには深く感謝せねばなるまい。 これもハルヒがコンピ研から強奪だの従属命令などといった暴虐の限りを尽くしたおかげか。 コンピ研の皆さんにはもはや乙としか言いようがない…ありがたく、今日もパソコンを使わせていただきますよ。 インストールが完了したあたりで古泉と朝比奈さんが部屋へと入ってきた。 と、よく見たら二人とも楽器を担いでいるではないか。おそらく昨日言っていたように 軽音楽部から借りたものなのだろう。来るのが遅かったのはこのせいだったんだな。 「って、大丈夫か古泉?」 「いえいえ、これくらいどうってことないですよ。」 キーボード1台のみの朝比奈さんはともかく、 古泉はあろうこともギター2台に加え、ベース1台の計3つも担いでいるではないか。 「わ、私古泉君を手伝おうと思ったんですけど…。」 「朝比奈さんはキーボードだけで十分すぎるくらいですよ。僕は好きでこれらを担いでいるんですから。」 相変わらずのさわやかフェイスで涼しく答える古泉。なるほど、女の子に負担を負わせたくないというヤツらしい ジェントルマン精神だが、俺がお前の立場でも間違いなくそうしていたであろう。何しろ朝比奈さんだからな。 「そうだ、良い機会だ。古泉よ、ベースの弾き方俺に教えてくれないか?」 「お安い御用ですよ。では早速始めてみるとしましょう。」 「じゃあ私もキーボードのいろんな機能を確認しとくとしまーす♪」 「私も…ギターをいらっておく。」 「長門はギター弾けるから別にその必要もないんじゃないか?」 「単純にギターに興味がある…ただそれだけ。」 長門に読書以外に関心のもてるものが現れるとはな…。文化祭にて、突発でいきなりギター引っ提げて ステージ上にハルヒたちが現れたときは何事かと思ったが、今ではそのことがこうやってSOS団みんなで バンドを楽しんだり長門の人間的嗜好の開拓といったことに繋がってる…こればかりはハルヒには 感謝しないといけねーかもな。あのときのハルヒの飛び入り参加は、長い目で見れば英断だったわけだ。 「なるほど、左から右へ1フレットずつ移るにつれて音が半音ずつ上がっていくのか。」 「その通りです。ちなみに手前の太い4弦から順に開放弦の状態だと E、A、D、Gの音が鳴りますよ。ミ、ラ、レ、ソのことですね。」 「開放弦ってのはどういう意味だ?」 「左手で何も弦を押さえずに弾く状態のことですよ。」 「おー、了解したぜ。」 「慣れたらTAB譜を見て弾くのもいかがでしょうか。 そっちのほうが、フレット番号が明記されていて弾くのには楽だと思いますよ。」 「TAB譜って何だ?」 「それはですね…」 ピン! ん?何だ??長門のほうから何やら音が聞こえたぞ。 「どうしたんだ長門?」 「ギターにチョーキングをかけていたら弦が切れた。ただそれだけの話。」 …その弦、まだ新しいやつじゃなかったか?一体どんなチョーキングをかけてたんだ長門?? 「おやおや、しかもこれは一番細い1弦ですね。これでは切れてしまっても仕方ありません。」 「やりすぎた。次からは自重する。」 …仕方ない…のか? まあ、しかし そんな長門が楽しそうに見えるのは 決して気のせいではないはずだ。良い趣味を見つけられてよかったな長門。 「な、長門さ~ん、助けてくださ~い!」 「何かあったの?」 「いくら鍵盤押してもキーボードから音が出ないんです…電源は入ってるはずなのにどうしてなんでしょうか?」 「これはシンセサイザーの部類。よって単体では鳴らない。 シールドでアンプに繋いで初めて、アンプから音が鳴る仕組みになっている。」 「あ、これアンプからじゃないと音出ないんですね…勉強になりました!ピアノから入った私には そういうの疎くて…あ、でも今ここにはキーボのアンプがないです…今日はあきらめるしかないみたいですね…。」 「その必要もない。そこにあるベースアンプでも代用は可能。」 「本当ですか!?ありがとうございます長門さん!」 「礼ならいい。」 「キョン君、ベースのアンプ貸してください!お願いします!」 「どうぞどうぞ、使っていただいて結構ですよ。今日はベースの基本技術を学ぶだけでアンプは使いませんからね。 そんな感じで、俺たちは有意義な会話をしていた。いつもは古泉とボードゲームだのカードゲームだので 時間を費やしていた俺であったが…こういう時間もなかなか楽しいじゃないか。一昨日、昨日の悪夢のことを 一時的にでも忘れられるという意味でも、尚更貴重な時間である。特に、昼休みに谷口から例の天気予報の話を 聞いてからというもの、放課後までずっとそれを引きずっていた俺には…な。もちろん、今でもそんな未来は 信じちゃいないさ。ただ、一つでもそういった判断材料があると不安になる…それが人間というものであろう。 本来なら放課後にでもこれら夢の一部始終について長門や古泉に相談しようと思ってはいたのだが、 正直今のこの談笑している空気を壊したくはなかったし、何よりハルヒ本人が部室に顕在だから話せなかった ってのが一番の理由だな。本人の目の前で能力云々語るのは言わずもがな、禁句である。 …いや、待て。 今気がついた。そういえば、ハルヒはいまだ部室には来ていないではないか。 いつものあいつなら…とっくに来ていてもおかしくないはずだが。 「おや、どうされたんです。涼宮さんのことが気がかりですか?」 「いや、気がかりってわけでもないんだが…やけに来るのが遅いなと思ってな。」 「掃除当番にでもなってるんじゃないですか?」 良い指摘ですね朝比奈さん。が、それにしても遅いような気がしますが…。 「!」 突然立ち上がる長門。 「涼宮ハルヒが…倒れた。」 …俺はベッドで横たわっているハルヒを見つめていた。 「先生、ハルヒの具合はどうなんです!?」 「大丈夫、大事には至ってないわ。おそらく軽い貧血ね。」 「そう…ですか。」 「今日のところは安静にしておけば大丈夫よ。幸い明日は土曜日だから、 それでも気分が治らないようなら、病院に行って診てもらえばいいと思うわ。」 事なきを得たようで、ひとまず俺は安堵の表情を浮かべた。 ------------------------------------------------------------------------------ 「倒れたって…どういうことだ長門!?」 「涼宮ハルヒの表層意識が、たった今消滅した。」 …??意識が消滅?何を言っているんだ?? 「原因は不明。今それを解析中。」 「長門さん!涼宮さんは今どこにいるんですか!?」 「旧校舎の玄関口からすぐ入ったところの廊下。おそらく部室へ向かう途中に倒れたものだとみえる。」 「キョン君、何をボサっとしてるんですか!?早くそこへ行ってあげてください!!」 突然の事態に状況が把握できずうろたえていたのであろう俺に、怒鳴りつける古泉と朝比奈さん。 「お…おう…!お前らはどうすんだ!?」 「長門さんが解析に手間暇かけている時点でこれは非常事態に他なりませんよ。 身体機能における単なる物理的損傷ではない…そういうことですよね長門さん??」 「そう。」 「であるからして、我々は我々でできることをします。原因の調査および機関への連絡その他をね。」 「今、涼宮さんの隣にはキョン君がいてあげるべきです!」 考えるよりも先に体が動いたのか、気付くと俺は廊下へと跳び出していた。 もちろん、ハルヒのもとへとかけつけるために。 正直、いまだに俺は混乱していた。そりゃそうだろう?ついさっきまでいつものごとく ピンピンしていたハルヒが…意識を失う?倒れる?一体何をどうしたらそんな展開になるってんだ?? 説明できるやつがいるなら今すぐ俺の所に来い。 しかし、自分にだって今すべきことはわかってる。この際、原因などどうでもいい… ただ一つ言えることは、一刻も早くハルヒの容態を確かめ、そして救ってやることである。 …… ハルヒを見つけるのにそう時間はかからなかった。案の定、長門の指定位置にて ハルヒはぐったりとした様子で壁に背を向けた状態でもたれかかっていた。 とりあえず最悪の事態は回避できたようだ。意識を失うタイミングにもよるが、頭から地面に激突した際には 最悪、脳震盪に陥る可能性だってある。しかし、このハルヒの体勢から察するに、どうやらハルヒは徐々に 薄れてゆく意識の中、反射的に頭だけは守ろうとしたのであろう…壁にもたれかかっているのがその証拠である。 例えば街中で運悪く出くわした不良に背負い投げでもされたとしよう。柔道に精通している者ならば、 とっさに受け身をとろうとするはずである。野球にてピッチャー返しをしようものなら、投手は瞬間の中で 球をキャッチしようとする動きに出るはずである。 今のハルヒにも同じことが当てはまる。スポーツ万能&運動神経抜群の涼宮ハルヒだからこそ、 成し得た芸当と言えるかもしれん。正直、俺がハルヒの立場だとどうなっていたかわからない。 ハルヒの顔に手を近付ける俺。どうやら息はしているようだ。俺の動作に一切の反応を見せないことから、 どうやら本当に意識を失ってしまっているようである。見方によっては眠っているようにも見えるが… とにかく、俺はハルヒを背負い、急いで保健室へと駆け込んだ。 ------------------------------------------------------------------------------ そして話の冒頭へと戻るわけである。 …しかし保健の先生には悪いが、俺にはハルヒの倒れた原因が単なる貧血には思えない。 元気のかたまりとも言えるハルヒに貧血など、不似合いにもほどがある。おそらく、それだけは 天地がひっくり返っても起こりえない事態のはずだ。何より、長門や古泉の尋常ではない焦りから判断しても、 単なる生理現象でないことだけは確かだろう。とにかく一刻も早いハルヒの回復を…俺は待ち望んでいた。 「……ん…」 …意識を取り戻したようである。 「…ハルヒ?!大丈夫か??」 「あれ、キョン…何でこんなとこに?…ってか何であたし保健室にいるわけ…?」 「お前が旧校舎の廊下で倒れているところを、俺がここまで運んできてやったんだ。」 「うそ…?そういえば手や足に力が入らないわ…。倒れたってのは本当…みたいね。 無様な姿をあんたに見せちゃったわね…。」 「どうってことねーよ。お前が無事で何よりだ。」 「…とりあえず、運んだってのが本当なのなら、一応礼は言っとくわ。ありがと…しかし困ったわね。 家までどうやって帰ろうかしら…。」 「それについては心配およびませんよ。」 うお?!いつのまにか背後に長門に古泉、朝比奈さんが立っているではないか。 もう調査とやらを済ませてきたのであろうか。 「タクシーを呼んできてます。いつでも発進できる用意はできてますよ。」 もうそんな手配まで済ましていたのか…相変わらず対応が速くて助かるぜ古泉。 「古泉君ありがとう。みんなには迷惑かけちゃったわね…。」 「そんなことどうでもいいんですよう!涼宮さんが無事でいられただけでも私嬉しいです…。」 「みくるちゃん…心配してくれてありがと。でも、もうあたし平気だから!ほらこの通り!」 潔くベッドからとび降り、仁王立ちしてみせるハルヒ。っておい、いきなりそんなことして大丈夫かよ?? 「ハルヒ、お前が元気だってことはわかったから、とりあえず 今日は無理はするな?俺がタクシーのとこまで背負っていってやるからさ。」 「まあ、あんたがそこまで言うなら仕方ないけど。」 渋々俺の背中にもたれる団長様。 …… タクシーには俺とハルヒの二人が同乗した。本当は長門と古泉、朝比奈さんも 付き添いたかったらしいが、あいにくタクシーにはスペースというものが限られている。 一旦古泉たちとは別れ、俺はハルヒを家まで送っていくのであった。 「しかしお前が倒れたというからびっくりしたぞ俺は。一体何があったんだ?」 「それはあたしが知りたいくらいよ!気付いたら意識がとんでたんだし…。」 「最近何か無理でもしてたんじゃないか?そのせいで一気に疲れがドバーッときたとか。」 「特に、何か無理をした覚えもないわ。」 「じゃあ精神的なものか?ストレスとかさ。」 「何に対してのよ?」 「いや…俺に聞かれてもな…。」 結局そんなこんなではっきりとした原因はつかめないまま、俺たちはハルヒ宅へと着いた。 「今日はゆっくり休めよな。なんせ明日は土曜だ。昼まで寝てたっていいんだぜ?」 「あんたねえ…あたしをバカにしてんの?ま、いいわ。とりあえず、今日はどーも。」 団長様が一日に二度も俺に礼を言うなんて、珍しいこともあるもんだな。 ハルヒと別れを済ませたあたりで、ちょうど携帯から着信音が鳴る。古泉からだ。 「もしもし、俺だ。」 「古泉です。涼宮さんは無事家まで戻られましたか?」 「おお、そりゃ元気な様子でな。」 「それはよかったです。ところで、涼宮さんが今日突如として昏睡状態に陥った原因についてなんですが…。」 息をのむ俺。 「長門さんとも話したんですが…正直に申し上げましょう。これは一言二言で伝えられる代物ではありません。」 …どうやら予想以上に深い事情がありそうな様子である。 「明日何か用事はあったりしますか?」 「用事?特にないぞ。」 「それは助かります。突然ですが…今日の夜11時に駅前近くのファミレスに来てほしいと言われたらどうします?」 「つまり、朝まで長話できそうなとこに集まろうってことだろ?全然構わないぜ。」 「ご明察です。それに加え、こういった場所だと食事も好きなときに注文できたりしますから、 聞き疲れを起こしたりしたときに、何かと都合がいいかと思いまして。」 なるほど…どうやら相当長い話になりそうである。それにしても食事か。なかなか用意周到じゃないか。 「だがな、なぜ11時なんだ?今6時だし、8時集合にしたっていいようなもんだが。」 「確かにその通りですね。しかし、もう少しだけ我々に時間をくれませんか? まだ原因の全てを把握できたわけではないのですよ。」 何、そうなのか。 「いえ、今のは表現が適切ではないですね。あくまでこれは僕自身の問題です。」 ?どういうことだ? 「今回の原因について、僕はかつてないほどの膨大な情報の処理や解釈に追われ… 弱音を吐こうなどとは思ってはいないのですが…正直、今僕はパニックに陥っている と言っても差支えないかもしれません。それほどまでに窮した事態なんですよ…。」 「な、何だ??その原因とやらがそこまで震撼させるような内容だったってのか??」 あの古泉が壊れかかってるんだ、おそらく話とやらは想像を絶するレベルなんだろう。 それを改めて認識したせいか、しだいに話を聞くのが怖くなってきた自分がいる。 「ですからその処理および解釈にもう少し時間がかかるということです。 そのへんはどうか、ご察しのほどをお願いします…。しかしですね、僕はこれに立ち向かいます。 立ち向かわずしてどうやって涼宮さんを救えますか。」 そうだ…これに目を背けたら、ハルヒは一体どうなるんだ?今日はあの程度で済んだが、もしかしたら次は こうはいかない可能性だってある。最悪の事態も考えられる。なら、俺も覚悟して立ち向かおうじゃないか。 それがハルヒを助けることに繋がるのならば…俺はそのための努力を惜しまない。 「長門さんと朝比奈さんにも連絡はつけています。では、夜11時にまた会うといたしましょう。」 「おう、またな。」 …まだ集合の時刻まで時間はある。 それまで家で仮眠でもとっておくとするか。話とやらは朝までかかるのだろうし。 …… 家に着いた俺は、とりあえず晩飯を食い、部屋に向かった後ベッドに横になった。タイマーは…念のために 10時半にセットしておく。寝過ごしたりでもしてしまうようなら、それこそ打ち首にされてもおかしくない。 そう例えられるくらい、今後を左右する重要な会議になるはずだ。 「少し眠るだけ…だ。さすがにまたあんな夢は見ねえよな…?」 内心不安だったが、しかしこればかりは気にしてもどうしようもない。 とりあえず、俺は目を閉じ、寝ることに専念した。 音が鳴っている… 俺はアラームを消した。 10時半…どうやらちゃんと起きられたようである。まだ少し眠たいが、そんなことを言ってる場合ではない。 さて、親に何と言うかだが…『友達の家で寝泊まりする』とでも言っとけば、まあOKだろう。 俺はコートを手に取り、部屋から出ようとした。そのときだった。 「ようやくお目覚めってわけだ。」 ふと背後から声が聞こえた。はて、これは幻聴か何かであろうか?当たり前だが、この時間帯俺の部屋には 俺一人しかいない。妹が勝手に部屋に侵入した?それはない。なぜならその声は男のものだったからだ。 しかもどこかで聞き覚えがある… 俺は後ろを振り返った。 「てめえは…!」 予想外の人物に俺は驚愕した。いや、俺が忘れていただけで、こいつと再び会うことは 必然だったのかもしれない。とっさに拳に力が入り、臨戦態勢に入る俺。 「おいおい、そんなに身構えなくったっていいだろう。別に僕は、あんたに危害を加えようなどとは思っちゃいない。」 どの口がそれを言うんだ。俺はお前らのしでかしたことを忘れたわけじゃねえぞ。 「誘拐の件についてはすでに謝っただろう?…まあ、それはいい。 今日は言いたいことがあってここに来た。」 朝比奈さん大の言葉を思い出す俺… 『藤原くん達の勢力には気を付けてください。』 …藤原…てめえ、一体何企んでやがる? 「差し金は誰だ?何の目的でココに来た??」 「…勘違いしてないか。確かに、この時代への時間移動命令については上からの指示だが、 あんたに会いにきたことに関しては、単なる僕の独断だ。」 「独断だと?そこまでしてお前は俺に何か言いたいってわけか。が、生憎様だな。どうせ俺に巧みな言葉をかけて 騙そうって魂胆なんだろうが、そうはいかねえ。朝比奈さんから、すでにそれに関しては忠告を受けてある。」 「何、朝比奈だと!?」 しまった、つい朝比奈さんの名前を出してしまった…まあ、もともと朝比奈さん大は藤原たちの勢力とは 敵対関係だったから、これも今更か。別に危惧するような情報流失でもない…と、とりあえず俺は信じたい。 「まさか…昨日の異空間からの転移は…ふ、まさか現行世界に直々干渉してくるとは。」 「おい、何ぶつぶつ言ってんだ?」 「いや、とりあえずあんたの話を聞いて理解はした。おそらく、僕が伝える予定内容を聞かせたところで、 あんたはそれに従わないであろうことにはな。やはり、僕らだけで何とかする問題だったか。」 「聞くだけ聞いてやる。一体何を伝えるつもりだったんだ?」 「『朝比奈みくるには気をつけろ』端折って言うならそういうこった。」 「なるほど、どうやら聞くだけ損したみたいだ。お引き取り願おうか。」 「まあ、はなからあんたは宛てにしちゃいないさ…さて、面倒なことになる前に撤収するとしようか。 九曜、もういいぞ。ここの時間軸を正常に…加えて、今の会話記録もこいつの記憶から抹消してやれ。」 「---了解した-------」 !?九曜だと??あいつもいたのか!!? その瞬間だったろうか 俺の意識はブラックアウトした
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ハルヒ「キョン! あれ見て!!」 キョン「おい、こんなところで走るな!」 ズザザザザザザーーーーー! 古泉「派手にやりましたね」 みくる「あわわわ、顔からですぅ~」 長門「ユニーク」 ハルヒ「いったぁい……」 キョン「こんな砂地で走ったらそりゃ滑って転ぶだろ……って、お前、その顔!!!!」 ハルヒ「顔痛い……って、え?あ、あたしの顔から血が……きゃあああああああ!!!」 キョン「落ち着け、単なる擦り傷だ!!!!」 長門「ユニークww」 古泉・みくる「「長門さん……?」」 ハルヒが顔に怪我しちゃった保守 ハルヒ「ううぅっ、あたしの顔が……あたしの美貌が……(涙目)」 キョン「まったく、ほらハンカチ。歩けるか? 保健室行くぞ」 ハルヒ「何よバカキョン……あたしが転ぶ前に支えなさいよ」 キョン「無茶言うなよ(やれやれ、さすがにショックか? いつもの勢いがないな)」 古泉「ここは彼に任せましょう」 みくる「はわわ、涼宮さん大丈夫でしょうか~」 長門「涼宮ハルヒの転倒……w」 古・み「「長門さん……?」」 保健室に移動したキョンとハルヒ キョン「すみませ~ん……あれ、誰もいないな」 ハルヒ「先生留守なの? しょうがないわね、キョン、あんたが手当しなさい!」 キョン「やれやれ、言われなくてもやってやるよ。自分の顔じゃやりにくいだろうが。 ほら、もっと顔を上げて傷を良く見せてみろよ」 ハルヒ「ちょ、ちょっと!!何顔に触ってんのよエロキョン!!(顎に手を添えるなんて反則よ!///)」 キョン「何言ってんだ、ちゃんと支えないと消毒しにくいだろうが」 ハルヒ「///(顔が近い!!!)」 そのころまだ外にいる3人 長門「涼宮ハルヒの顔面に損傷。そして次は……」 みくる「ひぃい!!?? な、長門さん!?」 古泉「(逃げた方が良さそうですね)」 ハルヒが顔に怪我しちゃった保守 ハルヒ「(ダメ、耐えられないわよ!!!)」 キョン「おい、ハルヒふざけんな! 何で顔背けるんだ!」 ハルヒ「だ、だって……///(恥ずかしいじゃないの……)」 キョン「ほら、ちゃんと消毒しないと痕が残ったら可愛い顔がもったいないだろ」 ハルヒ「え……? キョン、ちょっと何言ってんのよ!!///」 キョン「え? ……あ。(しまった、つい本音が!)」 ハルヒ「……」 キョン「……」 ハルヒ「サッサとしなさいよ……///」 キョン「分かったから動くなよ///」 ハルヒ「///(だから顔が近いってば!!!!)」 そして1行目に戻る 窓から覗いている3人 古泉「何をやっているんでしょうね」←逃げてなかったのかお前は みくる「何かいい雰囲気ですね~」 長門「……バカップルウゼェ」 古・み「……」 ハルヒが顔に怪我しちゃった保守 ハルヒ「痛い! もっと優しくやりなさいよ!」 キョン「しょうがねぇだろ。俺だって一生懸命やってるんだ」 ハルヒ「痛い痛い痛い~~~!!!」 キョン「おい、暴れるな!!!!」 ハルヒ「まだ終わらないの!?」 キョン「もうすぐ終わる。どうでもいいが何でずっと目を瞑っているんだ?」 ハルヒ「う、うるさい!///(だってこんな近くに顔が……)」 キョン「(うっ 赤面して目を瞑って見上げるのは反則だ!!!)///」 キョン「ほ、ほら終わりだ///」 ハルヒ「……あ、ありがと///」 ガチャ 古泉「おや、治療も終わったようですね」 みくる「涼宮さん、大丈夫ですか~」 長門「……会話がエロい」 古泉「いえ、それにしては彼が冷静過ぎます」 キョン「真面目に突っ込むな!!! てか長門????」 ハルヒが顔に怪我しちゃった保守 古泉「困ったことが起きました」 キョン「何だ?」 古泉「この保守の作者が、何も考えずに僕たちを絡めたおかげで先が続かなくなりました」 みくる「私たち、話の流れに関係ないですもんね……」 長門「無理があると判断できる」 ハルヒ「じゃあどうなるのよ! こんな中途半端で終わらせるなんて許されないわよ!!」 キョン「中途半端って何だ? ただお前が顔面怪我して俺が消毒しただけだろうが。落ちも何もねぇ」 ハルヒ「な、何よ! キョンのバカ!!!」 キョン「何を怒ってるんだ?」 古泉「あなたって人は……」 みくる「キョンくん……」 長門「……鈍感ワロス」 古泉「ところで、続かなくなった要因の1つに、おもしろ半分に長門さんを黒っぽくしたからというのがあるようです」 長門「……この保守作者の情報連結解除開始」 全員「ええええええ!!??」 (情報連結が解除されました。続きを読むには長門に再構成を依頼してください) 古泉「(き、気を取り直して)もう時間ですし、今日の所は帰りましょう」 ハルヒ「そうね。何か気分壊れちゃったし」 キョン「おい、俺が言ったら『あんたが仕切るな!』って怒るくせに……」 ハルヒ「あんたは雑用! 古泉くんは副団長なんだから当たり前でしょ!」 キョン「やれやれ……」 ハルヒ「キョン! あたしを家まで送りなさい!」 キョン「は? 何で俺が?」 ハルヒ「あたしは怪我人なんだからそれくらいの気遣い当たり前でしょ!」 キョン「別にたいした怪我じゃないだろ!」 ハルヒ「うっさい! 団長命令!!」 キョン「やれやれ、わかったよ」 古泉「じゃ、お願いしますね」 みくる「また明日~」 長門「……上手く私たちを追っ払おうという意図が見え見え」 古・み「「え??」」 長門「この保守作者の情報連 「もうその手は使えないんじゃないですか?」 長門「……」 キョン「ほら、帰るぞ。早くしろ」 ハルヒ「あんたが仕切るな!」 キョン「……やっぱりな」 ハルヒ「何よそれ?」 キョン「3行目」 ハルヒ「う」 落ちなしスマン 養護教諭は薬品棚に隠れていた保守 帰り道 キョン「何で俺が送ってるんだ?」 ハルヒ「今更何言ってんのよ! 第一あんたのせいでしょうが!」 キョン「は? お前が勝手に転んだんだろ。何で俺のせいなんだよ」 ハルヒ「あんたは雑用なんだから団長が危ないと思ったら身を挺してかばわなきゃダメなの!」 キョン「おいおい、俺は超能力者でも何でもないぜ。無理に決まってるだろ」 ハルヒ「何よ! 最初から諦める気? それでもSOS団の団員その1なの!?」 キョン「無理な物は無理だ。俺は俺にできる範囲でしか……(ハルヒを守ってやれない)」 ハルヒ「範囲でしか、何よ」 キョン「いや、まあできることしかできないってことだ(やばい、また訳のわからんことを言いそうになった)」 ハルヒ「情けない」 キョン「俺のせいってのは納得行かないが、送る位はやってやるよ。その顔で1人で帰るのが嫌なんだろ? ま、俺にできる範囲ってのはその程度だろ」 ハルヒ「う……(何で分かったのよ!)。そんなんだからいつまで経っても雑用から抜け出せないのよ」 キョン「はいはい、悪うございました(何でそんな嬉しそうに言うのかね)」 古泉「乙女心に疎い彼が、送って欲しい理由に良く思い当たりましたね。」 みくる「妹さんがいるからじゃないですか~? うふ、でも送って欲しい理由は他にもありますよね」 古泉「なるほど、恋愛以外ならある程度分かる、と。肝心な所は鈍いままですが……」 長門「……無理矢理出さなくてもいい」 古泉「まあまあ長門さん、出番があるのはいいことです」 みくる「あ、自転車乗って行っちゃいました」 キョンとハルヒの帰宅を尾行中保守 キョン「ほら、着いたぞ。また明日な」 ハルヒ「う、うん……」 キョン「何だよ? 何か言いたいことあるのか?」 ハルヒ「あ、明日も迎えに来なさい!!」 キョン「おい、俺を何時に起こす気だ。朝弱いんだぞ」 ハルヒ「う、うるさいわね! 十分あんたにできる範囲でしょ!! ……こんな顔で1人で歩きたくないんだから……」 キョン「……(しまった)。やれやれ、わかった。起きれたら来てやるよ」 ハルヒ「ダメ。遅刻したら罰金、来なかったら死刑!!!」 キョン「死刑は嫌だが、正直、起きる自信がない」 ハルヒ「そんなんだからいつも罰金から逃れられないのよ。仕方ないわね、朝起こしてあげるわよ!」 キョン「へ?」 ハルヒ「モーニングコールかけてやるって言ってんのよ! 団長自らよ? 感謝しなさい!!」 キョン「やれやれ……(そんな笑顔で言われたら断れないよな)」 ハルヒ「じゃ、また明日!!」 キョン「あんな怪我があってもなくても、ハルヒの笑顔は変わらないんだよな……」 キョン「て、俺何言ってんだ」 キョン「(そういや消毒してるときのハルヒ、何か雰囲気違って可愛……いや、何だ?)」 キョン「……はぁ(考えるのはやめた方がいいな)」 古泉「ハァハァ……おやおや、1人だと案外素直なんですね」 みくる「ぜぇぜぇはぁはぁ……く、苦しい……。長門さんは平気そうですね」 長門「この程度の移動速度で息が乱れる方が問題」 古泉「ここまで走るのはちょっと骨でしたね。……帰りますか」 長門「私たちは何しに来たのコラw」 自転車を走って追っかけた3人保守 翌朝 携帯が鳴っている キョン『……もしもし?』 ハルヒ『おっきろ~~~!!!!!!!』 キョン『起きてるから電話に出ている』 ハルヒ『何よ、つまんない。1回じゃ起きないと思ったのに』 キョン『何回電話するつもりだったんだよ』 ハルヒ『どうでもいいわ、そんなこと。それより7時半にうちの前! 遅刻は罰金だからね!!』 キョン『わかってるよ』 キョン「6時か。支度は終わってるんだよな。出るか。……眠い……」 ハルヒ「もう支度は終わってるけど、さすがに来ないわよね……」 30分後 ハルヒ宅玄関前 ハルヒ「何でもう来てるのよ!?」 キョン「罰金は嫌だからな」 ハルヒ「今からじゃ早すぎるわよね……」 キョン「部室で時間潰せばいいだろ」 2人とも実は楽しみで眠れなかったらしい保守 早朝の文芸部室にて ハルヒ「う~~~~~~~~~ん」 キョン「何鏡見てうなってるんだ。何か呼び出す儀式か?」 ハルヒ「バカ! んな訳ないでしょ! ……やっぱりひどい顔だな、と思ってるだけよ」 キョン「そんなことないと思うが」 ハルヒ「だってこの傷目立つわよ。バカキョンには女心が分からないのよね」 キョン「(そんな落ち込んだ顔するなよ) ……悪かったな」 ハルヒ「分かればいいのよ。……はぁ」 キョン「大げさに溜息をつくなよ」 ハルヒ「だって痕が残ったらどうしよう」 キョン「擦り傷だし、残りはしないだろ」 ハルヒ「……残ったら怪我とその発言の責任取ってもらうわよ」 キョン「やれやれ、どんな罰ゲームをさせる気だ?」 ハルヒ「……鈍感」 キョン「何だって? 聞こえなかったんだが」 ハルヒ「いいわよ、もう」 キョン「何を怒ってるんだ(今日はまだあの笑顔を見てないぞ)」 やべぇ、突っ込み3人組がいないと糖度が上がるw 傷のあるなしより笑顔が重要だと思っているキョン保守 教室にて 阪中「す、涼宮さん、その顔どうしたのね~~~!!」 ハルヒ「あ、これはその、キョンが……」 キョン「俺は何もしてない!」 阪中「キョンくん!!?? キョンくん非道いのね、女の子の顔に傷を付けるなんて!!!!」 キョン「だから誤解だ! あれはハルヒが勝手に……いてっ!」 ハルヒ「余計なこと言ってんじゃないわよ! あんたが悪いんでしょ!」 キョン「殴るな! 俺は何もしとらん!」 ハルヒ「何もしてないから悪いんでしょうが! 団長を守るのも団員の役目だって言ったでしょ!」 キョン「だから俺のできる範囲でしかお前を守ってやれないって言ってるだろうが!!!」 ハルヒ「できなくてもやれ!!!」 阪中「それって『俺の守れる限り守ってやる』ってことなのね~。素敵なのね」 ハルヒ「えっ ちょっと、何言ってんのよ!!!///」 キョン「阪中、何を言っているんだ。こいつが無理難題を言うからできる範囲が限られているってだけだ」 阪中「照れなくてもいいのね。恋人を守ってやるなんて、憧れるのね~」 ハル・キョン「「恋人じゃないっ!!!!!!」」 谷口「お前ら、昨日一緒に帰ってたよな。しかも自転車2人乗りで」 ハルヒ「だからちが~~う!! あれは怪我の責任取らせただけで……」 谷口「はいはい、もういいよお前ら」 ハルヒ「谷口殺す!!!!!!!」 谷口「WAWAWA~~~ グホッ ゲホッ」 キョン「谷口……骨くらいは拾ってやるぞ。やれやれ」 クラスメイト「(あいつらまたやってるよ……)」 とっくの昔にクラス公認だったハルキョン+やられキャラ谷口保守 放課後 キョン「やれやれ、今日はひどい目にあったな……」←谷口よりマシw ハルヒ「あたしのせいって言いたいわけ?」 キョン「違うのか?」 ハルヒ「違うわよ! あんたが変なこと言うから悪いんでしょ!!」 キョン「何だよ、変なことって」 ハルヒ「だ、だからそれは……!そ、その『できる範囲でしか守ってやれない』とか……///」 キョン「う……(確かに余計なことを言ったな畜生)。お前が無理言うからだろ」 ハルヒ「もう! とにかくあんたが悪いの!! 全部責任取って貰うんだから!!」 キョン「罰ゲームも罰金ももう勘弁してくれよ……」 ハルヒ「そんなんじゃないわよバカ!!!!」 パタン。本の閉じる音。 古泉「僕らはお邪魔でしょうから帰りましょうか」 みくる「えっ? あっ そうですね~」 長門「……ヤッテラレルカ、ケッ」 キョン「え? 何だよお前ら(特に長門!!!)」 ハルヒ「まだ終わる時間じゃないわよ?」 みくる「着替えるから出てけ~~~~~!!!!!!」 ハルヒ「みくるちゃんご乱心!!??」 キョン「ああ、朝比奈さんまで!!!(ここは異世界か?世界改変か??)」 結局前日からあてられっぱなしの3人保守 部室に残された2人 キョン「結局何だったんだろうな……あの3人は(後で古泉にでも確認するか)」 ハルヒ「知らないわよっ。……あんなみくるちゃん初めてみたし……」 キョン「長門もおかしかったような……」 ハルヒ「有希は気のせいってことにしないと怖い気がする。何でかしらないけど」 キョン「そうだな、気のせいだよな」 ハルヒ「気のせい、気のせい」 ハルヒ「はぁ……早く治らないかな……」 キョン「ハルヒ」 ハルヒ「何よ、あらたまって」 キョン「いや、その今朝の話というか……顔の怪我の話だけどな」 ハルヒ「何よ。やっぱりひどい顔とか言いたいの?」 キョン「アホ。んなわけないだろ。……だから、その、あんまり気にすんな」 ハルヒ「バカキョン! 今朝の話聞いてないわけ!!??」 キョン「ぐっ ネクタイを締め上げるな苦しい!! そうじゃなくてだな、怪我をしていようとしていまいと、痕が残ろうと残るまいと、ハルヒはハルヒだろ」 ハルヒ「意味わかんないんだけど」 キョン「だから、その、傷よりもそんな顔……ていうか表情しているハルヒの方が……なんていうか……」 ハルヒ「はっきり言いなさいよ! イライラするわね」 キョン「だから! 怪我があってもなくても、笑ってるハルヒの方がいいんだよ!」 ハルヒ「えっ///」 キョン「怪我が気になるのは分かるが、それでハルヒの良さが変わる訳じゃない。だからあんまり気にするな。 (あー畜生。俺は何を言っているんだろうね)」 ハルヒ「う……うん///。あ、そうだ! 怪我が治るまでは毎日送り迎えだからね!!」 キョン「覚悟はしてましたよ、団長殿 (言ったそばから笑顔が見れたのはいいが、起きられるか……やれやれ)」 実は長門によって3人に覗かれているハルキョン保守 キョン自宅にて古泉と電話中 古泉『今日はお疲れ様でした』 キョン『何の話だ』 古泉『涼宮さんですよ。彼女は顔の傷でショックを受けていた。 貴方の言葉がなければ、いずれは閉鎖空間が発生していたでしょう』 キョン『ショックはわかるが、俺がハルヒに言った言葉を何故お前が知っている』 古泉『正直に言いましょう。見ていました』 キョン『どうやって』 古泉『長門さんですよ。彼女は部室を常に監視しています。異空間がせめぎ合っていますからね』 キョン『なるほど……。で、お前も覗いたわけか』 古泉『失礼ながら今回は。朝比奈さんも一緒でしたが』 キョン『悪趣味だぞ』 古泉『分かっております。いつもそんなことをやっている訳じゃありませんよ』 キョン『ところで、長門や朝比奈さんがおかしかった気がするんだが』 古泉『気のせい……と言いたいところですが、貴方のせいですよ。正確にはあなたたち、ですか』 キョン『どういう意味だ』 古泉『見ていてイライラする、と申しておきましょうか』 キョン『わけがわからん』 古泉『これで分からなければお手上げですね。僕が「やれやれ」と言いたいくらいです』 キョン『人のセリフを取るな』 古泉『まあ、いずれ分かるでしょう。今日のところはこの辺で』 キョン「……やれやれ。明日も早いな。寝よう」 後を付けたりするくせにホントにいつもやってないのか?保守 一週間と数日後 ハルヒの自室 ハルヒ「治っちゃったな……」 ハルヒ「思ったより早かったわね……」 ハルヒ「もう、送り迎えはなしね……」 ハルヒ「……キョン……」 ハルヒ自宅前 キョン「よう」 ハルヒ「キョン、もういいわ」 キョン「何が?」 ハルヒ「送迎。もう怪我も治ったし」 キョン「それは良かったな。痕も残りそうにないな」 ハルヒ「うん……」 キョン「ま、今日のところはせっかく来たんだ。ほら、後ろ乗れ」 ハルヒ「ありがと」 キョン「元気ないな」 ハルヒ「そ、そんなことないわよ」 キョン「怪我も治ったのにな。何かあったのか?」 ハルヒ「何もないわよ」 キョン「……そうか。じゃ、行くからつかまってろよ」 何となくダウナーな雰囲気保守 再び早朝の部室 キョン「ハルヒ、やっぱりお前おかしいぞ」 ハルヒ「うっさいわね。何でもないって言ってるでしょ!」 キョン「まあ、言いたくないこともあるだろうが、言えることなら吐き出した方が楽になるぞ」 ハルヒ「だから何でもないの! (もう送り迎えがなくなって寂しいなんて言える訳ないじゃない)」 キョン「……そうか。ところでハルヒ。送迎の話だがな」 ハルヒ「……何よ(人の痛いところついてくるんじゃないわよ!)」 キョン「お前はもういいと言ったけど、続けていいか?」 ハルヒ「え? どうして? 面倒じゃないの?」 キョン「お前は俺が面倒だと分かっててやらせたのかよ」 ハルヒ「せっ責任は責任でしょ!」 キョン「おい、だから怪我は俺のせいじゃ……まあいい。送迎も面倒ではないとは言い切れんがな」 ハルヒ「じゃあどうして……」 キョン「せっかく早起きの習慣がついたんだ。今更戻るのもなんかもったいない。帰りはついでだ」 ハルヒ「そ、そう。あんたがそう言うならしょうがないわね。いいわよ」 キョン「そうか、悪いな」 ハルヒ「別に謝ることじゃないでしょ! 仕方ないからあんたは一生あたしの送り迎えしてなさい!」 キョン「一生!!?? おいまて、俺は一生お前の雑用かよ!!!」 ハルヒ「あったりまえでしょ!!」 キョン「やれやれ、元気出たからいいとするか……」 キョン「(いつの間にか2人で過ごす時間が楽しいなんて思っちまってるんだからな。やれやれ)」 ハルヒ「(理由は気に入らないけど……でもどうしよう、嬉しいかも)」 長門@監視中「いい加減素直になりやがれこのヤロウ」 みくる@長門製監視モニタを借りている「ふわぁ~ 涼宮さん、プロポーズです~」 古泉@みくる同様「彼は本当に分かってないのか、ポーズなのか……悩むところですね」 実は最後のモノローグすら素直じゃないキョン保守 1ヶ月後くらいの早朝の部室 ハルヒ「ねえキョン」 キョン「何だ?」 ハルヒ「……その、いつも……あ、ありがと」 キョン「どうした!? 急に! 熱でもあるのか!?」 ハルヒ「バカ! 違うわよ! 何よ、せっかく人が素直に……」 キョン「いや、悪かった。ハルヒに礼を言われるとは思わなかったんでな」 ハルヒ「あたしだってお礼くらい言えるわよっ! バカにしてんの!?」 キョン「だから悪かったって。まあ、俺が好きでやってることだからな。礼には及ばん」 ハルヒ「それもそうね。ま、あたしを送迎できるんだから感謝して貰ってもいいくらいよね」 キョン「おいおい。ま、それくらいの方がお前らしいか」 ハルヒ「て、話をはぐらかすんじゃない!」 キョン「は!? お前訳分からんぞ」 ハルヒ「その、まあ、あたしも感謝はしてるんだから……お礼でも……」 キョン「礼ならさっき言って貰ったぞ」 ハルヒ「そうじゃなくて……目を閉じなさい」 キョン「へ?」 ハルヒ「いいから!」 キョン「わかったよ」 キョン「……っ///」 ハルヒ「……///」 キョン「……今何をした!///」 ハルヒ「うっさい! お礼よ、お礼!///」 さて、ハルヒはキョンに何をしたんでしょうね?保守 ちょっとの間があった キョン「団長様にここまでしていただけるほどのことをした覚えはないんだが」 ハルヒ「何よっ バカにしてんの!?」 キョン「いや、そうじゃないんだが……」 ハルヒ「朝弱いって言ってるあんたが早朝から来てくれるんだし、あたしも楽だし……」 キョン「いや、だからそうじゃなくてだな」 ハルヒ「何よっ」 キョン「あー……。その、何だな。……お礼じゃないほうが嬉しいんだが」 ハルヒ「え? どういう意味??」 キョン「……っ/// 妄言だ、忘れてくれ」 ハルヒ「は? あんた団長に『忘れてくれ』なんて通じると思ってんの!!??」 キョン「……はい、思ってません(長門には通じたんだがな)」 ハルヒ「じゃあ説明しなさい」 キョン「……俺、実はポニーテール萌えなんだ」 ハルヒ「えっ」 キョン「いつだったかのお前のポニーテールはそりゃもう反則的なまでに似合ってたぞ」 ハルヒ「えっ それって……んっ……」 ハルヒ「……んっ…はぁっ……ちょっとあんた……///」 キョン「……まあ、つまりそういうことだ///」 ハルヒ「わけわかんないわよ///」 セリフあってるか?保守 ハルヒ「……まあいいわ。あんたSOS団団長にここまでしたんだから覚悟は出来てるでしょうね」 キョン「(嫌な予感)何の覚悟だ!?」 ハルヒ「あんたは一生SOS団の団員その1にして雑用係にしてあたしの下僕よ!!!」 キョン「ちょっと待て! 団員と雑用はこの際甘んじるがお前の下僕ってのは認められん!」 ハルヒ「うっさい! このあたしに…あ、あんなことして、許されると思ってるの!」 キョン「先にしたのはお前だろうが!!!」 ハルヒ「うっさい! あたしはいいのよ、団長だから!」 キョン「断じて認めん! 断固抗議する!!!」 ハルヒ「却下!!!」 古泉@覗き「ここまで来て素直になれないとは……お二人とも重傷ですね」 みくる@覗き「はわわわ~ 何でそこで喧嘩しちゃうんですか~~」 長門@覗き「……ここまで来て『好き』も言えない。予測不能」 キョン「……ちょっと待て」 ハルヒ「何?」 キョン「何か見られてる気がしないか?」 ハルヒ「誰もいないわよ……でも変ね、そんな気が……」 キョン「(あいつら、まさかまた見てるんじゃないだろうな!?)」 古・み・長「「「ばっち見てま~すwww」」」 キョン「……やれやれ」 ハルヒが顔に怪我しちゃった保守 おしまい。
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涼宮ハルヒのOCG(ハルヒ×遊戯王5D`S OCG) 今回初投稿させていただく者です。よくわからないことが多くて、更新履歴をややこしくしてしまってすいません。これからもよろしくお願いします。 ・涼宮ハルヒのOCG① ・涼宮ハルヒのOCG② ・涼宮ハルヒのOCG③ ・涼宮ハルヒのOCG④